2022年のステップ・アップ・ツアーもすでに3戦を消化し、全試合で初優勝者が生まれている。今週は佐賀県の武雄ゴルフ倶楽部で行われる「九州みらい建設グループレディース窓乃梅カップ」。変化に富んだ戦略性がコースの特徴で、距離も抑えめのコースは全員にチャンスあり。そこで、同ツアーを放送するCSチャンネルのスカイAで16年からラウンド解説を行うプロゴルファーの下村樹美に今週の見どころを聞いた! 今回は“はざま世代”のルーキーに注目!
■自己分析力が高い謙虚なルーキー
コロナ禍の影響で中止となった20年度のプロテストが昨年行われたため、21年度と合わせて2倍の1年生が今年はツアーに参戦している。昨年11月に行われた21年度のテストで合格した大林奈央が前戦でプロ初優勝を飾ったが、その大林は1999年度生まれ。いわゆる黄金世代の1歳下で、プラチナ世代の1歳上。“はざま世代”などと言われていた一人だ。
そんな“はざま”感を払しょくしたのが、昨季の稲見萌寧。レギュラーツアーで9勝を挙げる大活躍は記憶に新しい。そしてステップでも20年、21年とそれぞれ1勝を挙げている石川怜奈、さらに大林と勝者が増えつつある。
そんな世代のなかで、次に名乗りを上げるのは誰なのか。「須江唯加選手に注目したいです」と下村の口からは、19年に単年登録選手として1年間ステップに出場した経験を持つ選手の名前が挙がった。
「とても現実的な選手です」。いったいどういうことだろうか。「グリーンセンターに乗せることを基本にしているんです。すべて真ん中を狙う。それはティショットでも同じ。フェアウェイ真ん中を狙うんです。プロならピンを狙いたい気持ちはもちろんありますが、外したときのデメリットを考えれば、パープレーを基本にして、パーオン2パットのパー、そして、そこから何個バーディを獲れるかという組み立てなんです」。つまり、堅実ということだ。
攻撃的なゴルフでバーディを量産し、その半面、ピンチも多い選手のプレーは見ていて楽しいかもしれないが、こんな堅実性が持ち味の選手のゴルフは、むしろ親しみが湧くというもの。「実は高校の同級生に石川(怜奈)選手がいるんですが、須江選手に対して『狙えよ!』と突っ込んでいました。対照的な二人ですが、須江選手は実に自分のことを理解しているからこその戦略だと思います」と、下村の目には須江は“自己分析型”に映る。
「19年に参戦していたときよりも、下半身にしっかりと筋肉がついて大きくなっています。サンドバッグを左右両方の足で蹴ったりしているそうです。ショットの面ではこれからもっとスイングにスピードが出てくれば飛距離も出てきますし、元々得意としているアプローチ、パターの小技を生かせば、好成績が期待できるでしょう」(下村)
■自分では「ネガティブ」というが…
須江は自分のことを『ネガティブ』だという。だが、下村はそうは思わない。「何が今の自分に足りないかというのを理解しているんです。だから、目標は? と聞かれても、『賞金女王です』といった大きな目標を言いません。今の自分ならどこまでできるか、優勝に近づくためには何を補う必要があるのか。そんなことを一つ一つ考えているのだと感じます」。
4回目のプロテストでようやく合格。同世代の稲見や、つい先日10人目のレギュラーツアー優勝者が出た1つ上の黄金世代はもちろん、古江彩佳、西村優菜、西郷真央ら年下はすでに何勝も果たしている。それでも焦りなく、「自分のスピードでやっているのでしょう。ステップしていく設計図を造りながら、着実に進んでいく選手。目の前の小さな目標をクリアしていくタイプです」。ネガティブ要素はどこにもない。
「バーディの獲り方もいろいろあるんです。ベタピンに寄せるだけではないんです。須江選手のようにマネジメント力が高い選手がどう勝っていくかを見るのも楽しいと思いますよ」と下村。「かなり負けず嫌いのようですから、プライドもあることでしょう。でもそれはプロならみんな同じ。自分のスタイルを崩さずに努力し続けられる選手の成長を見るのも、ステップのおもしろいところです」。
最後に。「一番幸せなのは、愛犬3匹と一緒にいるときのようです。『何も考えなくていい』と至福の時間を過ごすようです」。インスタグラムでも頻繁に投稿をしている須江。とっても誠実そうな、マジメそうな、どこかネガティブそうな…いや、現実的な22歳の素顔が見られることだろう。
解説・下村樹美(しもむら・じゅみ)
1988年5月13日生まれ、愛知県出身。2011年にプロテストに合格。ケガなどもあり一線からは身を引いたが、16年からはスカイAでラウンド解説をしている。プロ目線での解説が好評。今年もステップ・アップ・ツアーから選手のプレーの模様や声を届ける。
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