<ほけんの窓口レディース 最終日◇15日◇福岡カンツリー倶楽部 和白コース(福岡県)◇6299ヤード・パー72>
トータル11アンダーで並んだ高橋彩華とのプレーオフ2ホール目に、15メートルのバーディパットを決め2年ぶりの優勝を手にした渡邉彩香。その様子をグリーンサイドで見守る人々のなかには、柔道家の夫・小林悠輔さんの姿もあった。
最後のロングパットを決め右手で力強く拳を握った渡邉は、優勝が決まると夫のもとに駆け寄りハグ。初めて夫婦一緒に勝利の喜びを分かち合った。「ハラハラさせんなよって(笑)。ただ僕もアスリートだから勝負は簡単じゃないということは分かるし、よく耐えて頑張ったなって言ってあげたい。簡単な勝ちはない」。小林さんは、終盤苦しみながらも勝ちきった妻をそう言って称える。
埼玉栄高の同級生だった2人は2021年2月に結婚。20年の「アース・モンダミンカップ」を最後に勝利から遠ざかっていた渡邉にとって、これが“ミセス初V”だ。2位で最終日を迎えた今年3月の「アクサレディス」でも夫は応援に駆けつけたが、その時は13位タイに終わっていた。「目の前で優勝を見せたかった。初めて見て『すごかった』って言ってくれました」。小林さんは初日を観戦後、用事があったため自宅に戻っていたが、それをずらし急きょ当日の昼に福岡のコースまでリターン。そして妻の最高の笑顔を見ることができた。
ともにアスリートの2人だが、「競技に関しての話は一切しないんです」と小林さんは明かす。ただ前週のメジャー大会で予選落ちした妻から、珍しく“ゴルフ”の悩みを打ち明けられた。
渡邉が開幕後から抱えていた、もどかしい気持ち。それを聞いた夫は『俺からしたらアスリートとして悩めるのは幸せだと思う。やってる本人はきついと思うけど、上を目指して悩めるのはアスリートとしては幸せ』という答えを返した。渡邉は「大きい一言でした。助けてもらっている部分は大きい」と振り返る。感謝の気持ちでいっぱいだ。
表彰式の後は、2人一緒に優勝カップを持ち記念撮影をした。「海外の選手が優勝した時に、一緒に写真を撮っている姿を見て“ひそかな夢”でした。できてよかったな」。少し前まで緊迫した状況のなかで戦っていた妻も、ひときわ大きな体の夫も、最後はとびっきり柔らかな表情で“夢の時間”を堪能した。(文・間宮輝憲)
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