過去に「全米プロゴルフ選手権」、「全米オープン」というメジャー大会を2度ずつ制しているブルックス・ケプカ(米国)は、新天地での初戦を前に「自分の下した決断にとても納得している。幸せだし、自分にとってベストなことをした」と胸を張った。これは現地時間30日に初日を迎えるLIVゴルフ第2戦(米国オレゴン州・ポートランド)を前に臨んだ、公式会見での発言だ。
メジャーハンターとも呼ばれる活躍をPGAツアーで積み上げてきた32歳は、新ツアーの2戦目を前に“移籍”を表明。これは現時点では、長年慣れ親しんできた場所から去ることを意味する。当初はPGAツアー残留の意思を表明しながら翻意。その経緯については「考えが変わった。ただそれだけ。信じられないかもしれないが、(2週前の)全米オープンが終わるまでは(移籍の)話はなかったけど、ここに行くと決めた。そして今がある」と説明する。
その決断に大きな影響を与えたのが、自身の体の状態。2019年に痛めた左ヒザや、昨年3月に手術を受けた右ヒザなど長らく故障に苦しんできた。コンディションはいまも「決して100%とはいえない」。
年をまたいで毎週のように試合が行われるPGAツアーに対して、LIVゴルフの今季スケジュールは8試合。開幕戦となったロンドン大会の最終日は6月11日で、第2戦が今週という試合間隔を見てもゆとりがあることは分かる。「ヒザの痛み、リハビリ、その他もろもろを経験し、もう少し休養が必要だと悟った。この2年間は決して楽な道のりではなかった。もう少し休みを取り、家でゆっくりして、すぐにプレーしなければならないという気持ちにならずにすむ」。そのうえで高額賞金が得られるとあれば、この決断は自然なことのように感じる。
ただPGAツアーのメンバー資格は返上しない。先週にはローリー・マキロイ(北アイルランド)が、ケプカらLIV参戦組について『二枚舌』と批判したが、それも冷静に受け止める。
「僕はローリーを選手として尊敬している。その発言については聞いてなかったけど、彼にはもちろん自分の意見を話す権利がある。ただ、彼がどう思おうと勝手。彼は彼と彼の家族にとってベストなことをするだけだし、僕も僕と僕の家族にとってベストなことをするだけ。そのことで誰かを憎むことはできない」
理解を求めることも、反撃をすることもしない。自分のスタンスを貫いていくことを強調する。とはいえ、そのPGAツアーは欧州ツアーとも手を組み、賞金増額などを表明し、新ツアーへの対抗心をむき出しにしている。“得意の”メジャー参戦についてなど、今後の見通しが不透明なことが多いのも事実。
しかしケプカには、「世界中どこでプレーしても大丈夫。そのなかに入っていける。決断をくだしたのは自分。もしどうなるにせよ、それには耐えることができる」と、その時々の事実を受け入れていく覚悟があるという。30日からのデビュー戦ではキャプテンを務め、弟のチェイス・ケプカらとチームを組む。「この新たなスタートは、エキサイティングで楽しいものになる。準備も整っている」。かつて世界ランク1位にも立った男は、最後まで迷いない言葉を口にし続けた。
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