先週から本州へと戻った国内女子ツアーは箱根へ。今週は1997年から続く、これまた夏の風物詩「CAT Ladies」が行われる。気まぐれな気候の“天下の険”とも称される山岳での戦いを制するのは誰なのか。青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める大西翔太氏が展望を語る。
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■ツアー屈指の風にどう対抗する?
2018年に大里桃子、19年に淺井咲希とツアー初優勝を挙げた選手が続いたが、元々は村口史子、不動裕理、宮里藍、横峯さくらといったツアーでも有数の実力者でなければ勝てない戦い。イ・ボミ(韓国、今年は欠場)が連覇を挙げていることからも簡単なコースではないことが分かる。
その理由が風だ。大西氏曰く「吹けば川奈かここがツアーでナンバーワンでしょう」というほど。天気予報に出ていなくても強風が吹くこともザラで「味方につける、最低でも負けない。それができなければ優勝はないでしょう」と最大のポイントとなりそうだ。
元々パー5だったが去年からパー4となった13番がキーホール。もしも、その風が吹けばパーを獲ることすら大変だ。「パー5用に作られたグリーンなので傾斜が難しい。アプローチにしてもパターにしても簡単ではありません」。これまでバーディとパーだったのが、パーとボギーになる、と単純なものではない。「パーだったら“まだいいや”となっていたのが、ボギーだと周りのスコアに関係なく精神的なダメージが大きいです」。
そんなグリーンは非常にきれいに整備されており、こちらもツアー屈指。「悪天候の後でもいいパットを打てばしっかり入るし、ダメなら決まらないというフェアな仕上がりです。だからパッティングが非常に大事」と攻略のカギを挙げた。
■いよいよ順番が来ました!
大西氏が期待したいと名前を挙げたのが菅沼菜々。まだ初優勝には届いていないが、今季トップ10入りが9回、総合的な評価を示すメルセデスランキングで11位と抜群の安定感を見せている。
なかでもパーオンホール、1ラウンド当たりでともに5位につけるパターのうまさは天下一品。先週の最終日には「64」を叩き出して、同組で見ていた大西氏も「あり得ないほど入っていましたよ」というほどだ。
「うまい人に共通する部分ですが、ラインを読むところから打つところまで迷いがなく、よどみがない。立ち居振る舞いから入りそうです。そしてリズムとテンポがいい。だから爆発できる」
また、葛城や茨城といった難コースで結果を示していることも強さの理由の1つ。「風への対応力も素晴らしいものがあります。しっかりと覚悟を決めてショットを打っているから迷いもないし、球もぶれない。すごく箱根に合っていると思いますよ」。先日「全米女子アマ」で優勝した馬場咲希が、「ゴルフを始めるきっかけとなった選手」と言った22歳に太鼓判を押した。
■全英帰りの2人も注目です
今大会で「AIG女子オープン」に出場していた選手たちも全員国内ツアーに復帰。そのなかの一人がパーオンホールの平均パット数で1位に立つ西村優菜だ。
「今週、練習グリーンで見ましたが、相変わらずスコスコ入っていましたので状態に問題はなさそうです。また、表情を見てもリフレッシュしたいい表情でした。帰国早々ですがいい勝負ができると思います」
もう一人、山下美夢有にも注目。「今週のグリーンのきれいさはメジャーが行われた茨城ゴルフ倶楽部並みですが、そこで優勝したのが山下さん。優勝争いのなか局面で決めきれる力は素晴らしいものがありました。さらに全英では初出場で13位に入ったということからも風への強さも折り紙つきです。こちらもいきなり勝ってもおかしくないと思いますよ」と世界を経験した2人に期待を寄せた。
解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。21年には澁澤莉絵留ともコーチ契約を結んだ。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。
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