<ファンケルクラシック 最終日◇21日◇裾野カンツリー倶楽部(静岡県)◇6985ヤード・パー72>
「ファンケルクラシック」でシニアツアー6勝目を挙げた鈴木亨には、刺激し合える家族がいる。そして信頼できるキャディも…。
娘は歌手やモデルとして芸能界の第一線で活躍する鈴木愛理さん。息子の貴之さんは「ゴルフに携わる仕事がしたい」と脱サラして、ティーチングプロとしての一歩を踏み出した。妻の京子さんもプロゴルファーだったが、結婚を機にクラブを置き、陰で夫を支えてきた。そんな鈴木をコースでサポートしているのが、柿沼基介キャディだ。
鈴木と柿沼キャディが初タッグを組んだ2006年の「三菱ダイヤモンドカップ」。いきなり2位タイに入り「何か合うのかなっていうのが始まり」だった。レギュラーツアーでの鈴木の最後の優勝となった09年の「マイナビABCチャンピオンシップ」、そしてシニアツアーに入ってから今大会を含めた3勝は柿沼キャディが隣にいた。「全部担いでいるわけではないですよ。大きい試合しか担がないですから」と柿沼キャディは笑うが、2人の付き合いは16年にも及ぶ。
実はいま、柿沼キャディの軸足はトーナメントではない。3年前からPGA TOUR SUPERSTORE入間店のスタッフとしてレッスンをしたり、フィッティングやグリップ交換などの業務を行っている。「やっぱりキャディを完全にやめたくなかった。会社が月1回はキャディをやってもいいよと言ってくれたんです」。鈴木のキャディをするときも「出勤扱い」でトーナメントに来ている。
何度か勝っているとしても、16年も同じ選手とキャディが関係を続けている例は珍しい。なぜ鈴木は柿沼キャディを指名し続けるのか聞いてみた。「やっぱりカッキー(柿沼キャディ)が僕のことを一番よく知ってくれている。僕のキャディは他の人では多分務まらないんじゃないかな。息子にやってもらう以外は彼しかいない。楽ですよ。カミさんもそうだけど、一緒にいて楽な人じゃないともたないし、それに近いです。レギュラーのときなんて家にいるよりもゴルフ場にいるほうが長いんだから、家族よりカッキーといる時間のほうが長かったはず」。ゴルフ場ではまさに女房役という。
柿沼キャディも鈴木と気持ちは変わらない。「いまは違う仕事をやりながらキャディをやらせてもらっていて、日常から抜け出してきているわけです。ビジネスって感じではないので、当然嫌な人とは絶対にやらないです。僕が生意気なことを言っていることもあると思うんですけど、トオルさんはそれを受け止めてくれる。僕の性格とトオルさんの性格が上手くいっているのかな」。
レギュラーツアー時代には鈴木の妻の京子さんや、娘の愛理さんが柿沼キャディに誕生日プレゼントを用意したこともある。「鈴木家はみんないい人ばっかりで、感謝しかないですね。トオルさんは愛理ちゃんや貴ちゃんから刺激を受けているだろうし、京子さんはトオルさんの尻を叩く(笑)。それでトオルさんも良くなってきた。家族の絆っていうのか、鈴木家ってすごくうらやましいと思います」と柿沼キャディはしみじみと語る。表彰式では息子の貴之さんが父の応援に訪れ、鈴木と柿沼キャディと仲よく写真に収まった。
大会最終日は単独トップでスタートした鈴木が1番バーディで波に乗り、常に2打以上のリードを保って逃げ切った。「ハーフターンして残り5ホールくらいからは優勝を意識したのかな(笑)。トオルさんは緊張していましたよ。(難しい)14番をパーで切り抜けたのに、15番ではボギー。そこはちょっと反省点です」。2位に3打差をつける快勝でも、そんなことを言えるのは柿沼キャディだからだろう。
<ゴルフ情報ALBA.Net>