今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第12回は、今年9月の「日本女子オープン」で、樋口久子に続く40年ぶり、2人目となる大会連覇を果たした畑岡奈紗。同大会で女子メジャー2勝目の最年少記録を作ったほか、大会史上最少スコア、公式戦72ホール最少ストロークをマークするなど様々な記録を生み出した。今季国内女子ツアーへの参戦はわずか10試合ながら獲得賞金は6000万円を超え、賞金ランク14位に入った畑岡のスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
【スイング連続写真】コンパクトさで飛ばす!体のバネをフル活用した畑岡のスイング
今季は国内ツアーで10試合に出場し、2勝を挙げた畑岡奈紗さんですが、18歳らしいアグレッシブなスイングですね。跳躍力など、体のバネを全力で使っている印象を受けます。よくいいスイングについての話をしますが、どんなに形がよくても、生きたスイングをしていなければ意味がないと思います。畑岡さんのスイングはまさに生きています。特に、腕の振りの速さと足の力強さ、このコンビネーションがいいですね。ダウンスイングではクラブヘッドが低いところから入ってきて、しっかりと右足で地面を蹴り上げています。低重心で地面をつかむように蹴ることで、大地のエネルギーをしっかり使えています。
スイング自体は非常にコンパクトですね。クラブが体の正面にあり続けるような体の回し方をしていますが、リストワークのうまさを感じます。けっして大振りするのではなく、コンパクトなスイングの中でしっかりと腕を振っています。スイング中に力を入れるところ、抜くところ、安定させるところをきちんと理解していると思われます。
また、彼女がシーズン中にランニングしているところを見かけますが、“速い”スピードで走り込める選手はそれほどいないでしょう。さらに、スイング中、両ヒザの間隔をキープしているのがいいですね。まるで両足の間に大きなボールを挟んだままクラブを下ろしているようです。両ヒザに余裕を持たせ、両ヒザの間隔を変えないメリットは、重心が上がらないことです。その分、ボールをしっかりととらえることができます。インパクトで自分の体重を乗せやすいので、自分のエネルギーをロスすることなくボールに伝えることもできます。
大きなフォロースルーを出すタイプではありませんが、その分、両ヒジが体の近くにあります。これもコンパクトなスイングに見える要因です。フォローが小さいと飛ばないと思うかもしれませんが、畑岡さんはヘッドスピードでそれを補っています。にもかかわらず、フィニッシュのバランスがものすごくいいことに驚かされます。まるで素振りのときのようなバランスで立っていられるからこそ、ショットの安定感があるのでしょう。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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