会場となった宮崎県出身の三浦桃香を筆頭に、勝みなみ、新垣比菜ら黄金世代の活躍が話題を集めた「アクサレディス」。だが、第2ラウンド終了時点でトップ10に入った14人中、5人もの黄金世代が顔をそろえたものの、最終日にはスコアを落とす選手が続出。そして54ホールを終えてトップに躍り出たのは、フェービー・ヤオ(台湾)と比嘉真美子の2人。3ホールに渡るプレーオフを制したヤオが、4年ぶりのツアー2勝目を挙げた。目まぐるしく変化した3日間を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。
プレーオフ終了後、抱擁する比嘉とフェービー…アクサレディスライブフォト
■“攻める若手”の伸ばしあいが目立った予選ラウンドだが…
第一ラウンドでは「68」以下を記録した選手が17名もいるなど、混戦状態に。2日目を終えても三浦桃香がトータル10アンダー単独首位、そして勝みなみ、新垣比菜、小倉ひまわりらルーキー勢が上位に位置していた。
「もともとスコアの出るコースに加え、開幕前の降雨でグリーンが柔らかくなり、バーディ合戦となった。3日目まである程度のグリーンの柔らかさがありましたね。攻めるショットが打てるから、”飛距離を出して短いクラブでピンの根元に”というスタイルの選手が上位に目立ったのではないでしょうか。若い選手は、かけひきなしの攻めのゴルフをする。加えていまの若手選手たちは、球をしっかり遠くに飛ばす技術を持っていますから」(辻村)
ルーキーたちが予選ラウンドに上位を賑わせたのは、そんな背景があったが、最終日は次々オーバーパーを叩いていった。サンデーバックナインまで優勝争いに踏みとどまっていた三浦も、16番のボギーをキッカケに、上がり3ホールで4ストローク落として脱落した。
「16番のパー3では、ティショットが右にいきましたが、重圧がかかっていたと思います。三浦さんはシャープなスイングでインパクトのタイミングがズレないタイプですが、あの場面ではズレていました。終盤で普段どおりのスイングができないのが優勝争い。これは経験を積んでいくしかありません」(辻村)
ちなみに新人に近い選手のなかで、最終日をアンダーパーで回ったのは勝のみ。最終日に勝負の分かれ目は、やはり経験か。高校1年の2014年「KKT杯バンテリンレディス」で優勝を果たし、高校3年間でもレギュラーツアーを経験してきた勝は「スコアメイクの仕方や勝負どころも一番理解しているルーキー」とキャリアの違いを見せつけた結果となった。
■スイング改善&体力強化で安定感が増したフェービー・ヤオ
若手が脱落していくなかで、比嘉真美子とフェービー・ヤオ(台湾)が安定したプレーを見せてトータル12アンダーで並んだ。最終的には、ヤオが2014年「フジサンケイレディス」以来の4年ぶり優勝をつかんだが、要因は、昨年とは大きく変わったスイングだと辻村は見る。
「以前は”体力負け”しているイメージがあり、インパクト付近で”立ち上がる”スイングで、結果、手元の詰まりが見られました。ですが、今年は開幕にあわせてトレーニングを行い、4〜5キロほど体重を増やしたことでスイングの軸がしっかりしていた。振りぬきがスムーズになり、ショットが上手くなったと感じましたね。最後まで振り切れる体幹が作れたのだと思います。飛距離も伸ばしていて、プレーオフでは飛ばし屋の比嘉さんに置いていかれていない感覚がありました。力強さが出ていて、いまはショットに自信を持っていると思います」(辻村)
敗れた比嘉は、普段から辻村が指導する選手。3日間すべて「68」でラウンドし、最終日もノーボギープレーと安定感を見せたものの、最後のプレーオフでは、悪いクセが出ていたという。以前は、腕の力でスイングをする傾向があり、インパクトのポイントが安定せず、ショットの精度が落ちてしまっていた。現在は課題として取り組んでいる最中だが…
「(プレーオフでは)課題の“力み”が出て、上体に力が入ってしまった。いまの比嘉さんの仕上がりは65〜70点ですが、練習の取り組み方は非常に充実しています。もう一段階スイングをレベルアップさせることが最大の目標ですが、この状態で優勝争いできたことは収穫です。今季は3勝はしないとダメだと思わせてくれるくらい、今後が楽しみだと思いますよ」(辻村)
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後は上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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