AT&Tバイロン・ネルソンは今年、記念すべき大会50周年。その節目の年となった今大会から開催コースがTPCフォーシーズンズ・リゾートからトリニティ・フォレストGCに変更された。
【関連写真】全米オープン最終予選会で石川遼が好位置!
トリニティ・フォレストは2016年に開場したばかりのニューコース。全英オープンを思わせるリンクススタイルのデザインで、英国のリンクス同様、攻め方は選手により、風により、状況によって何通りもある。
出場選手の誰にとっても初体験のコースゆえ、経験や知識ではなく、クリエイティビティこそが攻略のカギになる。そんな戦いの舞台で最大最高の創造性と忍耐力を発揮し、見事、勝利を収めたのは、今季ルーキーで21歳の米国人、アーロン・ワイズだった。ワイズといえば、わずか2週前のウエルスファーゴ選手権で優勝争いに絡み、2位になった選手である。あのときは首位に1打差で最終日に挑み、一時はジェイソン・デイ(オーストラリア)と首位に並んだ。
それは今季から米ツアーにデビューしたばかりのワイズにとっては、まるで夢で見たような状況だったが、そこで浮き足立ったり、ナーバスになったりすることはなく、ワイズは自分のゴルフを保ち続けた。初優勝は逃したが、自己最高の2位タイになり、「プレッシャーがかかる状況下で、いいプレーができた。メンタル面がしっかり保てた」と満足の笑顔を見せた。
そして、再び優勝争いに絡んだ今大会。3日目を首位タイで終えたワイズの言葉が印象的だった。
「2度目のチャンス。前回よりベターにする以外に目指すべきことはない」
2位になった前回よりベターな結果とは、もちろん優勝のこと。初めての優勝争いは2位でも満足の笑顔だったが、2度目の今回はそこから前進してみせる。爽やかな笑顔にそんな気概を込めて語ったワイズには、すでに貫禄さえ感じられた。
そして、その貫禄が示した通り、最終日のワイズは堂々たるプレーぶりでスコアを6つ伸ばし、2位以下を引き離していった。
「自分を信じ続け、自分のゴルフを保つことができた。昨日はナーバスだったけど、今日は一日中、心は穏やかだった」
2週前にも紹介したが、もう一度、ワイズの歩みを振り返ると、南アフリカで生まれ、3歳で米国へ移住したワイズは現在21歳。オレゴン大学時代の16年にカレッジゴルフのNCAA選手権で団体戦と個人戦の双方を制したのちにプロ転向。昨季は下部ツアーで1勝を挙げ、今季から米ツアーにデビューしたばかりだ。
まだルーキーだが、ルーキーとは思えないほどの落ち着きぶり。その秘訣は大学ゴルフ、下部ツアー、そして米ツアーへと踏むべきステップを素早く、しかし、しっかりと踏み、1つ1つのステップにおいて着実な成果を上げてきたからに違いない。
ワイズのこの優勝は、下部ツアー出身者による通算500勝目に当たるそうだが、ワイズいわく、「下部ツアーでも米ツアーでも、毎週毎週、試合会場に赴いてプレーすること自体は同じこと。米ツアーの試合は世界のベストプレーヤーたちと一緒に戦うという点で下部ツアーとは異なるが、そこで(2週前に)しっかりと優勝争いをしたこと、そして今週は初優勝できたこと。それが僕の自信につながっていく」。
大人たちはみな「まだ21歳」というが、ワイズにとって21歳は決して若すぎる年齢ではない。
「ジョーダン・スピースもジャスティン・トーマスも24歳ぐらいでキャリアのピークを迎えつつある。だから僕もそこを目指して頑張りたい」
どうやら世界のゴルフ界の若年化は想像以上のスピードで動いているらしい。
文・舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>