「勝つためにプレーしたい」。石川遼がそう口にしたのは、オフシーズン明けの「千葉オープン」に出場したときだ。初日を終えて単独首位に立ち、「勝つためにどういうプレーをしようかと、そこからプランを立ててやりたい」と、明確に勝利への意思を表した。
【写真】2試合連続予選落ちに神妙な表情を浮かべる石川
石川が国内ツアーに本格復帰してから9カ月。今シーズン開幕当初は「バーディ数を意識してやりたい」、「優勝争いをしたい」と口にしていた。しかし、4月の「中日クラウンズ」以降、最近では結果に対する明確な言葉がほとんど聞かれなくなったように感じる。
シーズン序盤に参戦した地区オープン2戦で連勝を果たし、休む間もなく挑んだ「東建ホームメイトカップ」では最終日の最終ホールまで優勝争いを繰り広げて2位に入った。序盤にこれだけの成績を残しながら、国内9試合を経るにつれて勢いが停滞していった石川。一体何が起こっているのか。
「(スイングで)今まで積み重ねてきたものを一旦解体してやるような感じだったので、うまくいかないときもあった。それが、だいぶ思い描く形には近づいてきた」。千葉オープンでは、オフに取り組んだことが成績にも反映されていた。「不安要素もあまりなく、いい練習ができている」。オフの間にたたき込んだスイングを試合でもかたちにすることができ、スイングへの不安感が少ないぶん、当時は結果を出すことに目を向ける余裕があったように感じる。
地区オープンとはいえ、「優勝」という結果を残して勢いづいたかに思えたが、以降は戦いの相手が、“結果を出すこと”から、自分自身に向いていった。東建ホームメイトカップを終えてからというもの、「試合を重ねるごとに、体を開くクセが問題としてでてきた」と、またしても技術的な迷路に迷い込んでいる。
一度はできていたはずのことが、できなくなっていく不安。2日目に5位タイに立ちながら、最終日に「76」とスコアを崩して28位タイに終わった「中日クラウンズ」では、「練習場では1回も出ないものが、試合になると出てしまうのは、何かがおかしい。曲がったらどうしようと考えたらだめ」と、思うようなパフォーマンスが発揮できない状況に、シーズン開幕当初につかみかけた自信はすり減っていく。
翌週の「日本プロゴルフ選手権」では、4位タイ発進を決めながらも、2日目にはフェアウェィキープ率14.29パーセントの屈辱。上位から転落して34位タイで終了した。「東建では(クラブ)14本バランスよくできていたのに、今は1本のクラブ(ドライバー)にとらわれてしまっている」。
意識はさらに暴れるショットをどうするかに向いていった。「頭がグチャグチャになっていた。なるべくシンプルに考えたい」といい聞かせるように口にしたのが、5月の「〜全英への道〜ミズノオープン」でのこと。同大会ではアイアンの調子を崩し、1月の「レオパレス21ミャンマーオープン」以来の予選落ち。さらに翌週の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」でも2週連続の予選落ちとなった。
このとき石川が話していたのは、やはり「練習用のスイングと、試合用のスイングがかけ離れてしまう」ことへの悔しさ。シーズン開幕当初は理想のかたちに近づいていたのは確かだが、それを試合で発揮しようと自分と向き合うほど、泥沼にはまっていく。そんな印象を持たずにはいられない。
国内ツアー本格復帰当初は、たびたび「米国に戻るためには」、「10年後に世界で戦えるようになるには」と、先を見据える表現を使った。再び石川の口から“勝利”について、“未来”について力強い言葉が聞けるのは、いつになるのか。
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