のっけからこんなことを言うのもなんですが、世のゴルファーってクラブの広告でテクノロジーをアピールしても響かなくなっているのではないでしょうか。少なくとも私はそうで、なぜそういう体になってしまったかというと、メーカーさんが「今度のは飛ぶ!」「プラス20ヤードを実現!」とか言い過ぎたからだと思います。「ニューモデルが出るたびにプラス20ヤードじゃ、今頃100ヤードアップしてなきゃおかしいだろ!」とツッコミを入れたくなるような「飛ぶ飛ぶ」攻撃(詐欺とは言いません)に、正直辟易しているゴルファーは少なくないのです。
かと言って、イマドキのドライバーが飛ばないと思っているかというとそうではありません。間違いなく昔より飛ぶし、簡単です。でもテクノロジーはそんなに気にならないのです。それより、そのクラブで自分が飛ばせるかどうかが重要です。となると打ってみるしかないわけで、情報にしても、世界のトップ選手の飛距離が伸びた!とかいう類のものではなく、そこらへんで普通にゴルフをやっているオジサンの飛距離が伸びたかどうかの情報が欲しいはずなのです。
そこで研究員の出番です。そこそこ歳もいってるし、適度に下手で適度に上手! アマチュア代表テスターとしてこんなに適任者はいないんじゃないかと自負している今日この頃ですが、誰も言ってくれないのでここでアピールしておきますね!
余談はともかく本題に入りましょう。今回試打したのは日本のメーカーのドライバー3本。ラインナップは,
①ミズノMP TYPE-1 (ロフト可変【9.5度】・TOUR AD J-D1 S)
②ブリヂストンTOURB XD-3(ロフト9.5度・TOUR AD TX1-6 S)
③本間ゴルフ TW737 445(ロフト9.5度・WIZARD EX-A 75S) です。
割と上級者が好むモデルたちですね。
今回面白かったのは、それぞれの飛びのテクノロジーを紹介しておこうと各社のホームページを見たところ、そんなに強調されていなかったことです。それでもミズノは「飛びの秘密」として航空宇宙素材を使用したフェースのたわみを挙げ、本間ゴルフは鍛流カップフェースという、ちょっとわかりにくいけど要は薄いカップフェースなんでしょ、と理解できる説明があるにはあるのですが、さほど力が入っているとは思えません。ブリヂストンに至っては商品ページにテクノロジーの説明がなくて、あちこち探すと、ようやく開発者が語っている動画に行き当たるというような、興味のある人にだけ伝わればいいや、的な感じです。
打ってみて驚いたのですが、どれも低スピンなんですよ。低スピンは海外ブランドの専売特許だと思っていたのですが、国内メーカーもなかなかのものです。というか、おそらく低スピンをテーマに開発したのではないでしょうか。低スピンを実現しておいて、後はどういう個性を持たせるのか、という観点でみな造られているような気がします。(※DATAの数値はコースボールじゃないし、あくまでも参考に留めてくださいね)
おっ、と思ったのがブリヂストン。打感がシャープで、つかまっている感覚がありながら、実際の弾道はフェードボールになっているというイマドキのゴルファーのニーズにマッチしたクラブです。初速も出ますし、打ち出し高さも14度台と理想的。何度打っても同じイメージでインパクトできる競技向きのモデルだと思いました。ドローも打てますが、強いフェードボールを打ちたい、ある程度腕に自信のあるゴルファーに勧めたいですね。
平均DATA(練習ボール)※コースボールだとそれぞれの数値は約1割アップすると思います。
ブリヂストンTOURB XD-3(ロフト9.5度・TOUR AD TX1-6 S)
初速62.5m/s 打ち出し角14.1度 スピン量1889 トータル飛距離234.7ヤード
ミズノは相変わらず低めの打音で、柔らかめの打感。このインパクトの世界観(と呼びたい)が好きなゴルファーにはたまらないでしょう。そして初速も出るし、高さも出るという、あまり文句のつけどころがないクラブです。 初速と打ちだし角のデータはXD-3とほぼ同じで、違うのは打感とドロー傾向が強いということでしょう。円軌道のイメージで打つドローボールで距離を稼ぎたいアベレージ以上のゴルファーに武器になると思います。
平均DATA(練習ボール)※コースボールだとそれぞれの数値は約1割アップすると思います。
ミズノMP TYPE-1 (ロフト可変【9.5度】・TOUR AD J-D1 S)
初速62.3m/s 打ち出し角14.5度 スピン量2013 トータル飛距離234.8ヤード
そして本間ゴルフですが、正直言うと研究員にはあまりうまく打てませんでした。初速は出るんですが右に抜けるんですよ。またつかまえようとするとつかまり過ぎてしまいます。なんでだろうと思ってホームページをよく見たら、インサイドアウトのアッパー軌道のスイングに合わせて造られているそうなんです。要はイ・ボミ選手仕様ということですね。だとすると、ヘッドスピード40m/s前後で、オンプレーンからレイドオフ気味のコンパクトなトップからインサイドアウトに直線的に振り出してドローボールを打ちたいタイプに合うということです。
平均DATA(練習ボール)※コースボールだとそれぞれの数値は約1割アップすると思います。
本間ゴルフ TW737 445(ロフト9.5度・WIZARD EX-A 75S)
初速62.7m/s 打ち出し角14.5度 スピン量1745 トータル飛距離236.7ヤード
はっきり言ってどれもよくできたクラブです。私は飛距離性能は初速の出方だと思っているのですが、そういう意味ではキャロウェイのエピックやテーラーメイドのMシリーズと比べて遜色ありません。違うのは、バックスイングでヘッドが暴れないことも設計意図に組み込まれているのだろうな、ということ。欧米のゴルファーはコンパクトなトップからパチンと叩くので、ヘッドに大きなエネルギー(慣性モーメント)を仕込んでおけば飛距離は出せますが、日本人ゴルファーはけっこう振りかぶるし、リリースのタイミングが早いので、海外ブランドの扁平で重心距離の長い大型ヘッドだと暴れてしまう場合があるのです。ですから重心距離はやや抑えめにして、ヘッド形状もキュッと絞めた形にしてあるのが国産ブランドの特徴。つまりこの3モデルは日本人のスイングの傾向を考えて設計されている、ちょっと上手い日本人向きのドライバーといえるでしょう。
実際問題、「エピックやM2を買ったけど使えなかった」という声をよく耳にするんですよ。それは欧米で主流のスイングを想定して造られているからであり、やはりマーケットのボリューム層である、「日本的なスイングの日本人」が飛ばせるのは日本ブランドのドライバーなんでしょうね。