<日本女子オープンゴルフ選手権 最終日◇30日◇千葉カントリークラブ野田コース(6,677ヤード・パー72)>
海外女子メジャー2勝で、かつて世界ランキングでも1位に上り詰めたユ・ソヨン(韓国)が貫禄の日本初優勝。最終日は5バーディ・ノーボギーの「67」で、後続を寄せ付けなかった。終わってみればトータル15アンダー。2位の畑岡奈紗に3打差をつける完勝だった。
【写真】優勝トロフィーに口づけをするソヨン
6番で初バーディを奪うと7番、9番とバーディを重ね、「リーダーボードを見たら3打リードしていることが分かったから」と、安全運転にギアを下げた。「後半はフェアウェイキープを最優先に回った」と、後半も危なげなく乗り切った。唯一のピンチは14番パー4。この日2度しか握らなかったドライバーのうちの1回で左ラフに入れると、前方の枝を気にしてグリーン横に外したが、そこからが圧巻だった。
「ピンは近いし、ラフだったけどスピンをかけないといけなかった。いつもよりフェースを開いて、低い球でグリーンを狙いました。絶対にしてはいけないミスはショートして戻ること。アプローチは5種類くらいの打ち方をしているけど、直感でどれを使うか決めている」
濡れたラフに入ったボールはピンまで12ヤード。すぐさまロフト58度のウェッジを抜くと、フェースをいつも以上に開き、ボールを右足よりに置いて低いながらも柔らかなタッチで難なくパーセーブ。「あそこは絶対にパーをセーブしたかった」というが、グリーン右エッジからわずか4ヤードのピンポジションをものともせずに、海外メジャー覇者の力を見せつけた。
7番パー5の3打目もグリーン回りからのアプローチを「高く上げて転がした」と、瞬時の状況判断と結果を導き出す技のバリエーションはさすがとしかいいようがない。この日は3度グリーンを外したが、いずれもパーセーブ。レイアップするのに使った3番ウッドでは「ティショットなら最大で260ヤード」と、繊細な妙技とパワーのバランスもバッチリだ。
現在の世界ランキングは4位。昨年も「ANAインスピレーション」でメジャー勝利を挙げているが、実は転機が2016年。リオ五輪の韓国チーム入りを目指していたソヨンは、ジョーダン・スピース(米国)をジュニア時代から教えているキャメロン・マコーミックコーチの門をたたいた。「大事な時期にいい選択と思えない、と周囲からいわれましたが、レベルアップしたかった」と、長期的な視野でゴルフの磨きに入った。結果、五輪出場は逃したものの、一大決心が成功だったことはその後の活躍が物語る。
「いろんなタイプのショットが打てるようになったし、どんなコースへのマネジメントも良くなっていった。私はトレーニングするとすぐに筋肉がついてしまうタイプ。トレーナーからは上体の筋肉をつけないようにいわれた。太くなると体が回らなくなるから、柔軟にスイングしたかった。コーチとトレーナーも近い関係にあるので、何が必要かがすぐに分かる環境なのもいい」
自身の求める理想と、チームの指示を受け入れられるだけのポテンシャルと実行力を持ったソヨン。「次の最大の目標は東京五輪に出ること」と、明確なビジョンも持ち続けている。2年後の東京五輪開催時には30歳を迎えているが、この向上心と対応力があれば、熾烈を極める韓国代表入りも決して難しくはないだろう。
「今週出て思ったのは、私は年をとっているということ(笑)。日本のツアーは若く素晴らしい選手が多い」とリップサービスも残したソヨンだが、レベルの違いは明らかだった。今大会の優勝で日本ツアーの正会員資格を得ることができるが、「主戦場は(米)LPGAツアー。日本は近いし、いくつかの試合には出たいと思う」と正会員になる予定はなさそうだ。
初日に首位スタートを決め、2日目に一時はトップを明け渡したが、決勝ラウンドではボギー1つで圧勝。4日間を通してもボギーは2つと抜群の安定感を誇った。世界の強さをまざまざと見せつけ、次なる舞台、母国で開催される国別対抗の「ULインターナショナルクラウン」出場に向けて、勢いをつけて帰国する。(文・高桑均)
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