<マイナビABCチャンピオンシップ 事前情報◇24日◇ABCゴルフ倶楽部・兵庫県(7217ヤード・パー72)>
2008年に行われた「マイナビABCチャンピオンシップ」。この年の大会では、今も語り草となる劇的なシーンが生まれた。それが石川遼が成功させ、プロ転向後初優勝を手繰り寄せた最終18番のウォーターショットだ。あれから10年。改めて石川、そして当時優勝争いを繰り広げた深堀圭一郎が当時を振り返った。
【写真】本大会の名物ホール、池が構える18番…
「手に伝わってくる感触は覚えていないけど、どういうイメージで打ったかは覚えています」
27歳になった今も、石川の頭のなかには17歳の時のあのシーンは色濃く残っている。
最終日を3位で迎えた石川は、スタート時にあった首位・深堀との3打差をひっくり返し、逆に2打差をつけるトップで最終18番パー5を迎えた。優勝を目前にし、グリーン前に大きな池が配置されたABCゴルフ倶楽部の名物ホールに足を踏み入れた石川は、「ティアップするときに手が震えた」という緊張状態。それもあってかティショットは左斜面のラフへと入っていった。
「自分の感覚ではバンカーの目玉と変わらないなと思っていたので、ウォーターショットはリスキーという印象はなかった」と当時を振り返った石川。その考えから、セカンドショットはあえて刻まずに、7番アイアンを握り、積極果敢に池を越えてのグリーンオンを狙った。結果的にグリーンには届かず、球は斜面を転がり池に落ちたが、大きな水しぶきをあげながらのウォーターショットはピン3mの位置にピタリ。その後これを2パットで沈め、8mのバーディパットを決めた深堀を振り切り、歓喜のガッツポーズを見せた。
2位に終わった深堀にとっても、「会場に来るたびにあの時のことは思い出す」と印象深いシーンとなっている。そしてあの場面を「競技の枠を超える選手が現れたことを印象付ける、ゴルフ界が大きく変わった一つのシーン」と断言した。自身が決めたバーディパットについては「そう簡単にプロは勝たせるもんじゃない、という気持ちがどこかにあったと」と振り返る。プロ転向初年度の“ルーキー”に見せたプロの意地が、あのプレーをさらに印象深いものとして演出した。
深堀は「今だったらどう攻めるのかな?とは考える」と話した石川のセカンドショット。これについてその張本人は、「あれは想定の範囲内で止まってくれたし、とてもいいセカンドショットだった。あれをもう1回打てるかというと難しいとは思う」という補足もしたうえで、「今あの状況でも、同じ判断をする」と話した。
今後もゴルフファンの間で語り継がれていくであろう名シーンが生まれた地で、再び4日間の戦いが始まる。記憶に残るプレーが数多く生み出されることも期待し、最終日まで各選手の一打一打に注目したい。(文・間宮輝憲)
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