米ゴルフ界の2018年を象徴する言葉は「復活」の二文字だった。1月からタイガー・ウッズが戦線復帰し、早々に復活の兆しを見せ始めたと思ったら、3月にはフィル・ミケルソンが47歳にして世界選手権シリーズのメキシコ選手権で4年半ぶりの復活優勝。黄金時代には犬猿の仲と言われていた2大スターが、4月のマスターズで仲良く一緒に練習ラウンドした姿は、世界中のゴルフファンに笑顔をもたらした。
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今年1月に左手首を故障し、戦線離脱していたブルックス・ケプカが馬専門のカイロプラクターによる施術を受けてスピード回復し、6月の全米オープンを制して大会2連覇、さらには8月の全米プロも制してメジャー通算3勝を挙げたことは、ゴルフ史に残る大復活ストーリーだった。
そんなふうに素晴らしき復活のドラマが披露された傍らで、あっと驚く出来事もいくつかあった。一番印象に残っているのは全米オープン3日目にミケルソンがグリーン上で動いているボールをパターで打ち返してしまったあの奇行。独自の科学的分析に基づき、同一レングスのアイアンを使用しているブライソン・デシャンボーがピン位置を正確に把握する目的で長年、試合中にコンパスを使い続けていたことにも驚かされた。
どちらもルールにまつわる仰天の出来事だったが、ルールと言えば、2019年1月からゴルフルールが大幅に変わることは2018年のゴルフ界で話題に上り続け、いまなお混沌としているというのが現実である。
従来のゴルフルールが来年からはシンプルでわかりやすいものに変わるとされており、これまではペナルティに相当するかどうかの判断が複雑だったケースの多くが今後はシンプルにノーペナルティとなる。ボール探しの所要時間が5分から3分に短縮されるなど、ゴルフ界の長年の懸案事項であるペース・オブ・プレーの改善も期待されている。
だが、一方でアンカリング禁止などの特定の項目に関しては「説明や規定が曖昧すぎる」といった批判の声も上がっており、バンカーから2罰打で脱出できるといった規定に対しては「ゴルフというゲームそのものが根底から覆されてしまう」と懸念する声も聞こえてくる。そうした規定に対して米ツアーがどう対処し、どんなローカルルールを設けていくかは、今後の大きな課題である。
日本のゴルフファンにとっての2018年は、松山英樹の成績が振るわず、少々物足りない1年という印象だったかもしれない。2月のフェニックスオープンで左手親指の付け根付近に激痛を感じ、戦線から1か月半ほど離れた松山は、復帰後は優勝戦線に絡めず、下位フィニッシュや予選落ちとなって唇を噛み締める日々を経験した。
それでも踏み留まり、シーズンエンドのプレーオフで回復ぶりを見せ、最終戦のツアー選手権を4位タイで終えた松山の姿に、彼のネバーギブアップの精神力を感じ取ったファンは多かったことだろう。
「ショットが安定してきたおかげで、求めているレベルではないが、シーズン終盤でトップ10に2回入れた。自分のゴルフはショットでどれだけ安定感を出せるか。(来年は)シーズンを通して頑張れる力を付けて、トーナメントをリードしていけたらいい」
シーズンの最後の最後に松山が来年への希望を見い出した最終戦で、勝利を飾ったのはウッズだった。
2013年8月以来、5年ぶりの復活優勝。ウッズはどん底のときも自身をサポートしてくれた周囲の人々への感謝の気持ちを膨らませ、2人の子供たちに戦って勝利する父親の姿を見せられたことを何より喜んでいた。
2019年はウッズのさらなる勝利、そしてメジャー15勝目に期待が集まり、世界ナンバー1のケプカを筆頭とする若きトッププレーヤーたちのさらなる活躍も期待され、役者はすでに勢揃いしている。
米ツアー日程がこれまで以上の短期集中型に変わり、レギュラーシーズン終了時に新たなボーナスが支給される新システムも始まるなど、選手たちにとってのインセンティブは十二分に整えられ、モチベーションはこれまで以上に高まっているに違いない。
米ツアーと米ゴルフ界の2019年にたくさんの「期待」があることは、クリスマスを迎えつつある世界中のゴルフファンにとって、うれしいプレゼントと言えそうだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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