<ウェイスト・マネージメント・フェニックス・オープン 最終日◇3日◇TPCスコッツデール、アリゾナ州(7261ヤード・パー71)>
4打リードで迎えた最終日。だが勝利は簡単には転がり込んでこなかった。冷たい雨が振りしきるコースで優勝に向けひた走ったリッキー・ファウラー(米国)は、10番のバーディで後続に5打差をつける一人舞台。このまま独走かと思われた。
ウイニングボールを手に誇らしげな表情を見せるファウラーの祖父・田中豊さん
しかし、直後の11番パー4で試練が訪れる。グリーン前から打った第3打のアプローチは、思いのほか強く出てしまい、グリーンを通り越し奧の池へ。さらに1罰打を払いドロップし、5打目を打とうとしたのだが、そこからボールが“消失”していた。傾斜で、再び池に転がり落ちていってしまったのだ。結局ここでトリを喫し、一時ブランデン・グレイス(南アフリカ)にリードを許す要因となった。
「今日は(5番の)ダブルボギーと(11番の)トリプルボギーがなかったら、ずっと楽だったはず。良いプレーだったのに、雨のコンディションでミスジャッジをしてしまった」と振り返ったファウラー。しかし、「あそこで大きく流れが変わってしまうと思ったが、すぐに忘れて次のことを考えようと思った。あのトリプルボギーは良いトリプルだった」と、苦難を力へと変えた。
17番で再び逆転を奪い、2打リードで最終ホールへ。ティショットを左ラフに打ち込んだものの、最後は1.5mのパーパットを沈め、両手の拳を突き上げた。
16年大会ではプレーオフのすえ、松山英樹に敗戦。この時の会見では「祖父の前で勝ちたかった」と涙を見せた。それ以降も祖父の日系米国人、田中豊さんに勝利を見せることができておらず、ファウラーの心にひっかかっていた。しかしようやく、応援にかけつけていた祖父母、両親、そしてフィアンセのアリソン・ストーキーさんにその瞬間を見せることができた。
勝利を決めアテストを終えたファウラーは、祖父にサイン入りのウィニングボールを手渡し、喜びを分かち合った。さらに優勝会見では、記者たちにシャンパンの振る舞いも。「祖父はまだプロになった僕の優勝を見ていなかった。父も初めて。勝利のあとのシャンパンの味は最高だ」。今回の勝利の美酒は格別だった。
「この勝利は少し特別。ただの普通のトーナメントじゃない。この雰囲気が大好きだし、ここのファンが大好きだ。何度も優勝争いをしながら勝てていなかったから、ついに勝てて本当にうれしい」
11度目の出場でついにつかんだフェニックス・オープンでの勝利。この味を忘れることは決してない。
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