プロゴルファーになって13年目のキム・ハヌル(韓国)にとって、2019年はある意味、忘れられない年になったかもしれない。
韓流女優のような美しさ【写真】
「韓国でプロになってから一番ダメな一年でした。成績もそうですし、コンディションもよくありませんでしたから…」
今季は25試合の出場に留まり、6試合が予選落ち、1試合が棄権。最高位は「大東建託・いい部屋ネットレディス」の8位タイで、シーズンが終わってみれば賞金ランキングは56位と低迷した。
15年に日本ツアーに参戦してから初めてのシード喪失。しかも07年に韓国ツアーに本格参戦してからシードを落としたのも初めての経験だという。それだけショックは大きかった。
「13年間、毎日同じことの繰り返し。どうしてもそういうストレスはあったのかなと思います。精神的にも肉体的にも耐えられない状態にありました」
苦悩を正直に吐露するハヌル。確かにプロになってからは順風満帆のゴルフ生活を送ってきた。韓国ツアーでは2年連続賞金女王の肩書きを持ち、韓国には特定選手を追うファンが多いが、“選手公認ファンクラブ”が初めて作られたのもハヌルの人気がきっかけだ。
名実ともに韓国ツアーでの地位を確立させた彼女が、満を持して選択したのは日本ツアーだった。参戦1年目から1勝を挙げて初シードを獲得。翌16年はメジャー初優勝を含む2勝して同4位、17年は3勝して同4位と年を重ねるごとに成績は上昇した。
18年は未勝利だったが、同29位で賞金シードをどうにか獲得。ただ、この頃から思うようなゴルフができなくなってきたという。
いったい、何が起こっていたのだろうか。ハヌルは自分なりに不調の要因をこう分析していた。
「初日、二日目がよくても、最終日にスコアを落としてしまうことが多かったんです。それは体力的な部分からきているのだと思います。もちろん結果が出ないので自信をなくしてしまうメンタル的な部分もあると思いますが、最終日まで体力が持たないのが、プレーに影響が出てしまっていたんです」
そうはいってもほかにも原因があるのではないか。特に17年にメジャーの「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で優勝して得た3年シードが、ハヌルに戦うモチベーションを低下させてしまっていたのではないか、と勝手に思っていた。その質問をぶつけると、ハヌルは「そんなことはありません」とキッパリと言い切った。
「複数年シードはありましたが、賞金ランキングが高いほうがいいに決まっています。シードを持っているから力が入らないとか、そういう気持ちはありません。今までツアーで戦って、シード圏外になったのは過去にありませんでしたから、悔しいのは当然です。ただ、こんな状態になったのが初めての経験なので、自分の実力を受け入れて、認めないといけないのに、それが中々できなかったのがつらかったです」
つまり、ハヌルにとっては初めてのスランプで、そんな自分をまったく受けいれることができずにストレスをためてしまっていた。両親や周囲のスタッフからは「これまで成し遂げてきたことも多いし、来年またがんばればいい」と、励ましの言葉やアドバイスもたくさんもらったという。それでも、「私が大丈夫ではなかった。自分のプライドが邪魔していたんです。でもシーズンは終わったので、すべてを受け入れようと努力しているところです」。
31歳はまだ十分にツアーで戦える年齢だ。シーズンが終わった今はすべてをリセットし、また一から来シーズンに向けた準備を早々に始めている。
課題は2つ。体力向上とパッティングだ。特に今年はパーオン率が14位なのに対し、パーオンホールでの平均パット数が51位と不調の要因になっていた。
「正直、全盛期の頃よりも少しずつ衰えを感じているのはありますが、すでにトレーニングを始めています。今年はパッティングがあまりにも悪かったので、そこを徹底して克服していきます。ショット力はピーク時よりも落ちていると思うのですが、そのぶん、経験値が増えているので、まだまだ優勝争いできるレベルにあると思います。とにかく2年間がとてもつらかったので、もうこの思いはできればしたくない。今年の経験は今後の人生に必ず生きてくる。なので、来年はまた立ち直れるきっかけをつかめると思っています」
来年は優勝よりも、自分が克服できなかった部分を徹底して向上させていきたいという。
「それに……」と前置きして、ハヌルがこう続けた。
「ここでゴルフをやめて、逃げたように思われるのも嫌ですから。このまま終わるのは正直、悔しい。まだまだやってみたいことが私にはあります。またここからはい上がっていかなければならないって本気で思っています」
この力強い言葉を聞くだけでも、彼女の来季への本気度が伝わってくる。3年ぶりの復活優勝も期待していいかもしれない。
文 キム・ミョンウ
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