<三井住友VISA太平洋マスターズ 事前情報◇11日◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>
三井住友VISA太平洋マスターズの開幕前の練習場で、ツアー通算7勝の武藤俊憲がアイアンのクラブテストをしていた。武藤は今年の「日本オープン」まで、バリバリのマッスルバックアイアン『ミズノプロ120』を使用していた。ところがキャディバッグに入っていたのは、この秋に発売されたばかりのグローバルモデル『JPX 921ツアー』で、その手に握られていたのは、それよりもやさしい『JPX 921フォージド』だったのだ。
実は今週出場するミズノ契約の選手では、時松隆光、手嶋多一もすでに『ミズノプロ』から『JPX 921ツアー』に変更。また、今シーズンからほとんどの選手が、ドライバーを『ミズノプロ』から新モデルの『ST200』シリーズに切り替えている。武藤はアイアンの変更について、ドライバーの影響が大きいと考えているようだ。
「ミズノプロのドライバーが飛ばないわけではないけど、ST200Xのほうがはるかに強い球だし飛ぶ。もうミズノプロには戻ろうと思わない。重心距離の問題でドライバーに合わせて、ミズノプロ120を振るとつかまり過ぎてしまう」。それで武藤は『ミズノプロ120』よりもフェース幅が広く重心距離も長い『JPX 921ツアー』を10月の「ISPS HANDA コロナに喝!! チャリティーレギュラートーナメント」から使い始めた。
過去、丸山茂樹や伊澤利光、宮里優作といった日本屈指のショットメーカーたちは、重心距離の長い大きいヘッドのドライバーへの適応に苦しんできた。これまではアイアンに合わせてドライバーのヘッドを小さくしたり、鉛を貼って重心距離を短くするという考えだったが、いまや重心距離の長いドライバーに合わせて、アイアンを替える選手も出てきたのだ。
武藤はクラブを車に例えて「ミズノプロ120はある程度上から入れてスピンをかけないとボールが上がらなかった。完全マニュアルのデリケートなアイアンだったんです。でもJPX 921ツアーはそんなに上から入れなくて上がってくれるから楽。オートマ寄りのセミオートマという感じです。ドライバーがデリケートなクラブではなくなってきたからそっちでいいかな。だってF1もクラッチペダルがない時代ですよ」と表現する。
話をクラブテストに戻そう。武藤が練習場で一瞬打っていたのは、実際に試合で使用した『JPX 921ツアー』ではなく、『JPX 921フォージド』なのだ。わかりやすくするためにPWのロフトで見ていくと、『ミズノプロ120』のPWのロフトは46度。武藤はすべての番手を2度寝かせて48度で使っていた。これが『JPX 921ツアー』では46度。これを1度寝かせて47度にしている。『JPX 921フォージド』になると、45度になる。その差はロフト3度。一番手も変わってしまうのだ。
「JPX 921フォージドを初めて打ちましたが、打感は悪くない。むしろいいです。今まで6番アイアンに『7番』って書いてあって、シャフトの長さが7番になっている。何球か打ってトップしていたのは、見た目と長さが合わないためです。入れるとしたら、50度のウェッジを1本増やして、4番アイアンを抜かないとダメですね。ちょうど1番手なので基本的にはスッと替えられるはず」
この試合からの投入はなさそうだが、今後は可能性があることを匂わせるコメントだ。武藤は「今年も頑張るんだけど、来年に向けていろいろやっている」とも。今季は来年まで続く特殊な長いシーズンだから、職人気質のベテラン選手たちがクラブをガラッと入れ替えるには絶好の機会なのかもしれない。今シーズンを境にプレーの様式も変わりつつある。
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