<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 最終日◇9日◇茨城GC東C(茨城県)◇6630ヤード・パー72>
首位に3差の2位からスタートした西村優菜が、4日間60台を達成する「68」をマークし、トータル14アンダーで国内メジャー初優勝を挙げた。160ヤード以上はユーティリティやフェアウェイウッドを使う飛ばない西村が、なぜ距離の長いメジャーで勝つことができたのだろうか。
「私はセカンドで160、170ヤード残ることが多い。飛ぶ選手はアイアンで打てるけど、そこにハンデができる。自分はショートウッドに自信があるし、アイアンと同じように打てるようにしています」。西村のセッティングを見てみると、3番ウッド、5番ウッド、7番ウッド、9番ウッド、6番ユーティリティと、ドライバーを入れてウッド系は6本。アイアンは6番からとなっている。
「練習ラウンドのときからアウトコースは距離が長くて、セカンドでウッドを持つホールが多い。正直、距離が出ないと厳しいかなと思った」と考えていた西村。予選ラウンドで一緒に回った原英莉花には、ドライバーで40〜50ヤード置いていかれ、「キャディさんと2人で原英莉花さんのドライバーに惚れ惚れしていた」と笑う。しかし終わってみれば、ただ一人4日間すべて60台を並べて、難コースを攻略してみせた。
7番ウッド、9番ウッド、6番ユーティリティでセカンドショットを打つことが多いアウトコースは「耐えるゴルフが必要」といいながら、アイアンやウェッジで打てるチャンスをしっかりものにした。1番パー5では残り80ヤードの3打目を58度で1.5メートル。フォローの風が吹いていた3番パー4では残り160ヤードを7番アイアンで手前4メートル、7番パー4では残り130ヤードから9番アイアンでピン横5メートルにつけてバーディを奪った。
耐えるプランだった前半で2つ伸ばして、首位の高橋彩華と大里桃子を1打差で追うトータル11アンダーで後半を迎えた。「後半に入って攻めるじゃないですけど、優勝に向けて強いプレーをするとスタート前から決めていた。1打ビハインドだったけど、インで伸ばせばチャンスはあると思ってギアを入れました」と一気に攻めに転じる。
12番パー4では、7番ウッドで打ったセカンドショットが、手前から乗ってピンに向かって転がり1.5メートルにつけバーディ。この時点で首位の大里をとらえる。続く130ヤードの13番パー3では、9番アイアンでピン奥3メートルにつけてバーディを奪い、一気に大里を抜き去った。
「緊張していた」という残り3ホール。「16番、17番は難しいので耐えようと思っていた」という西村は、フェアウェイ真ん中に1本の木がそびえ立つ16番パー4をきっちりパーオンしてパーで切り抜けると、170ヤードの17番パー3では5メートルを沈めてダメ押しのバーディ。ここで2位に3打差をつけて、優勝をほぼ決定づけた。
ドライバーでのフェアウェイヒットはパー3を除く14ホール中12回。14番ホールで右のフェアウェイバンカーに外すまで、フェアウェイをとらえ続けた。ドライバーの安定感に加え、「オフにアプローチ、パターに力を入れて練習した」というグリーン周りからの技術も光った。
1番をバーディとして迎えた2番パー3。「外してはいけないところに打ってしまった」というティショットはピンサイドの左のラフへ。ここでピンが近い下り傾斜に打っていくアプローチを手前で3クッションを入れて70センチに寄せパーとした。「1クッションじゃダメ。2か3クッションはいるというイメージが上手く出た。思った場所に落とせた」と振り返る。
グリーン奥のカラーに外した15番でも、「ウェッジという選択もあったけど芝が逆目で、しかも1クッション入れないといけない。パターを選択しました」と冷静な判断力でしっかり寄せてパーをセーブした。「去年は寄ればOKだったけど、今週はチップインが3回。グリーン周りから狙えるシーンが多くて、すごく成長したと思います」と自分を評価する。
この優勝で賞金2400万円を加算して、賞金ランキングは6位に浮上。「目標は21年で複数回優勝、そして賞金ランキングトップ5に入ること。それを達成できるように成長できたらいいかなと思います」と改めて決意を語った。賞金女王を目指すかと聞かれると、「そういう欲も出てきますけど、まずは複数回優勝して、賞金女王に近づけたらいいと思います」と150センチの小さなメジャー覇者ははにかんだ。(文・下村耕平)
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