今季、国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第2回は昨年の賞金女王ながら今季は1勝と少し寂しい数字となったイ・ボミ(韓国)をフォーカス。賞金女王となった2015年、16年とはスイング的にどこが違ったのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。
【スイング連続写真】イ・ボミ不調の要因を連続写真で探る
昨年まで2年連続賞金女王だったイ・ボミさんですが、今年は賞金ランキング23位に終わりました。その不調の原因はスイングにも表れているように感じます。まず、アドレスですが、これは相変わらずきれいな形ですね。頭を中心としたスイング軸上に、手元とクラブヘッドがくるように構えられています。頭、手元、ヘッドが一直線に並んでいるイメージです。また、アベレージゴルファーに参考にしてほしいのがグリップです。右手はスクエアで左手をフックグリップで握っています。これは最近の主流のグリップですが、ボミさんのようにパワーがない人は左手のナックルが3つは見えるぐらい、手の甲を上に向けたほうがいいでしょう。
気になるポイントは、ダウンスイングです。以前はもう少し上からヘッドが下りていましたが、今年は少し下から入っています。飛球線後方からの写真を見ると分かりますが、ダウンスイングでグリップエンドが指す方向を見て下さい。本来ならグリップエンドは、ボールよりも内側を指しているはずですが、今年のボミさんはボールよりも遠いところを指しています。これはクラブが遅れて下りてきている証拠です。体の開きを見る限り、ヘッドが2コマ分は遅れて下りてきていると思われます。その結果、インパクトまでにヘッドが下りてくるのを間に合わせようとして、手でクラブを戻そうとします。いわゆる手打ちですね。当然、インパクトではタイミングを合わせにくくなり、パワーも伝わらないので、コントロールもパワーも低下します。
また、ダウンスイングでは上体の前傾角度が今までよりも少し起き上がっているように見えます。ヘソやグリップエンドの向きがボールよりも遠いところを指す理由の一つですね。このタイミングのずれは、振り遅れにつながるのでボールを右に打ち出しやすい傾向があります。しかもヘッドが垂れ、クラブフェースが開いた状態でインパクトを迎えるので、プッシュアウト気味に飛んでいくことが多かったはずです。それが怖くて無理につかまえようとすると、体の動きを止めてしまうので、やはり体とクラブのタイミングが合わなかったと思います。
今年はスイング中にクラブの重さを感じられなかった1年だったのかもしれません。なぜなら、手でタイミングを合わせようとしていたからです。それだとどうしても手に力が入った状態になりますからね。体が開き気味で手元が体から離れてしまうので、ボミさんのいいところであった体の回転をうまく使えていなかったように思います。
そんなボミさんですが、今季終盤、とくに最終戦は少しずつ良かった時に戻っているような気がしました。この復調のきっかけを上手くつかんで自信が出てくれば、また来年は憎たらしいくらい強いボミさんが戻ってくると思いますよ。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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