<中日クラウンズ 初日◇28日◇名古屋ゴルフ倶楽部和合コース(愛知県)◇6557ヤード・パー70>
和合の18番パー4。フェアウェイ左サイドにフェアウェイバンカーがある。以前は縦長でひとつのバンカーだったが、2018年にふたつに分けてアゴを高くした。ここにつかまればグリーンを狙うのが容易ではなく、ティショットの落としどころが難しくなる。この日のティボックスからは、バンカーを越えるのに287ヤードが必要だった。
18番ティイングエリアに立った石川遼は、「無風かちょっとフォローだったので、頑張れば(左のフェアウェイバンカーは)越えるかな」とドライバーを握った。「まあまあのスイングができた」というショットは、きれいなハイドローの弾道で、バンカーを楽に越える位置のフェアウェイにキャリーした。スイング改造を始めて2年。これが成果の一つだ。
「数年前はあのバンカーを越えなかった」。18年大会ではティショットがバンカーにつかまり、ダブルボギーにした経験もある。19年は低くて右に曲がるローフェードで逃げていた。「無理矢理打ちに行くのではなく、しっかりいいスイングをした結果、ハイドロー、ドローになるというスイングを2年かけて作ってきました。15番、16番、18番はそれができていた。長いスパンで1年、2年と振り返ると、明らかにめちゃくちゃ良くなっている。特にドライバーでそれを感じます」。和合ではドライバーで打ちにくいロケーションのホールでも、しっかりとドローで攻めた。飛距離、方向性ともに向上。手ごたえを感じている。
「スコアっていうのは、それ以外の要素で決まってくる。ショートアイアンの距離感や方向性。そこはまだ仕上がっていない感じがしていてもどかしいけど、順番にやっていくことが大事。自分でコントロールできることをしっかり増やしていきたい」。いい仕上がりを見せるドライバーショットに対して、ショートアイアンはまだ未着手だ。スコアは3バーディ・3ボギーの「70」。首位と9打差の53位タイスタートとなったが、10年、15年先を見据えている石川にとっては織り込み済み。
「どんなライからでも基本、今はドロー一辺倒になっている。まずはドローを極めたい」。この日は125ヤード付近の距離から2度打ったが、現在のスイング作りの進捗状況が顕著に出た。
12番パー4の2打目は、ピンまで残り125ヤード。ツマ先上がりで、ピン位置はグリーンの左エッジから3ヤードに切られた。ドローが打ちやすい傾斜で、ピンを狙いやすい状況だ。「ボールを右に出してもセーフティな場所に乗る」と、52度のウェッジで右に打ち出した。イメージ通りのドローボールはピン右手前に落ちて、左1メートルに止まってバーディを奪った。
対して、納得のドライバーショットを見せた18番パー4は、ピンまで残り124ヤード。軽いツマ先下がりでピン位置はグリーンの右エッジから7ヤードに切られていた。フェードボールで狙っていきたい状況だ。「18番は右に打ち出していいかというと、右にバンカーがあるので、出し過ぎはダメ。その狭間にいると、ああいう突拍子もないミスが出る」。52度のウェッジで打ったボールは、左に引っかけてピンの左奥10メートルの位置に止まった。
12番と18番は距離も番手も同じだが、傾斜とピン位置は真逆。「18番は12番と同じ番手でも、自分のライじゃない。自分のピン位置じゃない。そこで気合いでいこうとすると、ああいうミスになる。今は自分にできることとできないことをしっかり分けて、まずはいいコンタクト、いいスイングすることに徹すれば、あそこまでの結果にはならない。理想でいえば、ちょっとラインを出すフェードが理想。今後、数カ月後に練習を初めていけるようなスイング作りのステップを踏めればいいと思います」。傾斜に合わせて球筋をコントロールするのもゴルフの醍醐味(だいごみ)だが、今の石川はドローを打つスイングに注力している。
「インパクトの感覚だけでやっていた昔は、12番はドロー、18番はフェードっていうのをやっていたと思うし、そういうのがハマった週は上位にいて、ハマらなかったらダメっていう戦いを毎週やっていた。今後は、しっかりと自分の持っている技術の中で対応していって、高い位置で波を抑える。そういうゴルフができればなと思います」。石川の目指すゴルフに、着実に歩みを進めている。(文・小高拓)
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