今回は特別編、噂の軟らかボールは飛んで曲がらんってホント!?
今回は特別に最近話題となりつつある“軟らかディスタンス系ボール”の性能を徹底調査。業界でも初めて、ボールの各層ごとのコンプレッション(硬さ)を調べてみた。噂のボールの“曲がらん度”は果たして……。
今回は特別にカバーだけでなくボールの内側もむきだし、ミッドやコアも計測。三光精衛所製「KAMOSHITA COMPRESSION」の測定器で各層を2ミリ潰し測定。気温23度、湿度60%。
硬さは7段階で明記して、様々なモデルの各層の平均値からの相対評価で診断。コンプレッションとは表層から0.1インチ(2.54ミリ)潰した時に必要な重量を数値化したもの。今回は2ミリ潰した数値での計測となっている。
ボール各層のコンプレッション(硬さ)を計測した筒は次のように分析する。「ディスタンス系ボールは、全体のコンプレッションは低め。その中でカバーやミッドの厚みや素材を工夫して、低スピン化を図っています。『ゼクシオ』も『ファイズ』もカバーやコアなど全体が軟らかいのが特徴です」(筒)。
フルショットでも打感が非常にソフトでヘッドスピードが遅い人でも球が潰せるように設計されているのがわかる。ディスタンス系はカバーに反発力の高い素材を採用しており、全体が軟らかくともカバーの方がコアよりも硬い構造にして、外剛内柔構造でボール初速を上げる工夫をしているのだ。
「ツアーボールはヘッドスピードの速いプロなどが性能を出せるための設計なので、ディスタンス系より高めのコンプレッションですね。ただ、カバーは薄く摩擦力の高いウレタン素材を使うので、アプローチでスピンがかかるのです」(筒)
今回は、アマチュアに多いHS40m/sに設定し、筒が試打。アマチュアに多いといわれるハイスピンで球が右に曲がるスライス弾道を打ってもらったが、軟らかボールだと結果はいかに?
外は硬めで内が軟らかめの外剛内柔型で、低スピン・高弾道で飛び、カット軌道で打っても飛距離が非常に出ます。打感はソフトで打音は高め。ゼクシオ好きにオススメ(筒)
ボールの潰れ戻りが非常に速く、ボールが非常に速く飛び出して、飛距離が出る。ボール全体が軟らかめに感じるが、低スピンで非常に球が曲がりにくいですね(筒)
打感が非常にソフトでフェースに球が長く乗る感覚が得られる。飛距離、曲がりにくさもあるうえ、ショートゲームのスピン性能も高くオールラウンドなシーンで使えます(筒)
HS40m/s前後でツアーボールを打つと、低スピン化にはならず、全体が硬い構造のため、HS45m/s以上で打つと低スピン弾道で打てた。「HSが速いならば、硬めのツアーボールのほうが飛距離は出る。逆に軟らかボールを打つと、コアが潰れすぎてハイスピンになりますね」(筒)
低価格の球でHS40m/s前後で打ってみると、3240回転と高スピンとなり球が右へ出てOBゾーンへ。飛距離も全然出なかった。飛距離189.9ヤード、スピン量3240回転。
実際に軟らかボールを打ってみた筒は次のように語る。「ドライバーでボールを打つと、1〜1・5センチほど球はつぶれるが、ミッドを含めたコアは軟らかいほうがより低スピン傾向になります。実際にカット軌道で打っても軟らかいディスタンス系ボールだと曲がり幅は減るので、平均飛距離も伸びました」。
コンプレッションを調査した結果では、「ゼクシオ」「ファイズ」などはミッドコアやインナーコアも非常に軟らかい。カバーは反発力の高い素材を使用した外剛内柔構造でも、HS40 m/sで打っても十分に球が潰れてボールは飛ぶ結果となった。
「データでは60%以上のゴルファーは、ヘッドスピード通りの距離が出ず縦横のスピンが増えてエネルギーロスに。とにかくスピン量を減らして、曲がり幅を減らすことが飛ばしへの一番の近道となります」(筒)
回答:ブリヂストンスポーツ ボール商品企画担当課長 宮川直之氏
フルショットでは球が軟らかいと球自体が潰れて球の半径は短くなる。するとテコの原理と同じで、支点からの距離が短いほうが大きな力が必要となるため、ヘッドの後ろが落ちにくくなり低スピンになる傾向にあります
球が硬くて球の半径が長くなるほうが、支点からの距離が長くなり、小さな力でもヘッドが動く状態となる。つまり、フルショットではスピンがかかりやすくなる(右)
アウトサイド・イン軌道で打つとヒール側に球が当たり、球がフェース面で横滑りしてフェースは開きサイドスピンが増えてしまう。上からヘッドが入ると余計にハイスピンに
筒に5球ずつHS40m/s前後で打ってもらい、その平均値を記録
ツアープロやクラブメーカーから絶大なる支持を受ける弾道測定器「トラックマン」で計測。軍事用に開発されたシステムを採用した正確な測定に定評がある