<ゴルフ5レディス 最終日◇2日◇GOLF5カントリーみずなみコース(6,545ヤード・パー72)>
後半で追いつかれる展開にも、プレーオフが中断となる事態にも百戦錬磨の実力者は慌てなかった。「ゴルフ5レディス」最終日、申ジエ(韓国)が黄金世代の小祝さくらとの2ホールにわたるプレーオフを制して今季2勝目を挙げた。
【写真】誇らしげに優勝カップを掲げる申ジエ
後続に1打差の単独首位で迎えた最終日だったが、「パターのミスが多かった」と、最終日の強さから米ツアーで“ファイナルラウンドクイーン”と呼ばれたジエらしくない展開。要所を締めるも後ろから追いかけてきた小祝に並ばれ、プレーオフへと持ち込まれてしまった。
すぐさま行われたプレーオフ1ホール目も小祝がティショットを大きく左に曲げる中、自身はフェアウェイ真ん中に。だが、何とかといった様子でパーを拾った小祝に対して、ジエもバーディを奪えずに決着つかず。2ホール目に入ろうかというところで雷雲接近を知らせる中断ブザーで仕切り直し。流れは明らかに小祝に傾きかけていた。
それでも、いつ再開されるか分からない、もしかしたら明日に持ち越されるかもしれない。そんな自身初の状況にも冷静だった。「とにかく集中力を失うことがダメだと思ったので、そこに気をつけました。バックナインをスタートするときの気持ちに戻ろう」とロッカー内の人がいないところで一人静かに過ごした。
そうして約1時間40分後に再開した2ホール目。「長い時間待っていたので体が固くなっていた。固くなると力が入ってしまう」とティショットを打つ前に軽くジャンプをしてほぐすと、ラフに曲げた小祝に対してしっかりとフェアウェイをキープ。2打目もしっかりとグリーンをキャッチしてじわじわプレッシャーをかける。小祝が3mのパーパットを決められず、ジエは7mをきっちり2パットでフィニッシュ。「ちょっと長い1日でしたね」という20ホールに終止符を打った。
タイトルを争う相手は10歳も年下。先輩としての威厳を見せたい思いもあった。「プロの世界には国籍は関係ありません。ゴルファーの後輩に対して素敵な見本でありたい」。最大限の準備をして、ジワジワとプレッシャーをかけた。小祝も「元世界ランク1位ですし、とても怖い存在。圧を感じていました」。
「日本に来てから若い選手に色々質問されるようになりました。とてもうれしいです。教えてあげたい気持ちが強いので」。そう思うようになったのも、自身が日韓問わず先輩から色々と学んできたから。「福嶋晃子さん、そして大山志保さん。一緒にやっていてとてもモチベーションになっていますし、たくさんのことを教えていただいています」。そうして先輩から受けたものを後輩に伝えていく。そこに国境は存在しない。
そんなジエから見る小祝はというと「強い世代の選手の一人。堂々としたプレーがとても印象的でした。また、ティショットを曲げたりと私よりも大変な状況でしたが、良いプレーを見せていました」。最後にエールを。「今日の経験を生かして、これからもっとかっこいい選手になって欲しい」。若手の壁となった30歳はそういって微笑んだ。(文・秋田義和)
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