上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が、女子プロの中でも特に“うまい!”と思う選手のプレーをピックアップし解説する「女子プロの匠」。今回はアン・ソンジュ(韓国)のアプローチをチョイス。
4度目の賞金女王となった今季は、パーセーブ率1位、リカバリー率1位と“守備面”の活躍も目立った。葛城ゴルフ倶楽部の「ヤマハレディース」や小樽カントリー倶楽部の「ニトリレディス」といったツアー屈指の難コースでのタイトル奪取。そして、女王を決定づける5勝目を挙げた「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」では4日間のパーオンは72ホール中50回にとどまったものの、アプローチをしっかりと寄せて逃げ切り。今年は特に“小技”が光った1年だった。ちなみにこの大会で、「夏の芝と秋の芝はちょっと変わる」と開幕から使用していたウェッジを替えていたことも見逃してはならない。
中でも“ふわり”と浮かせてピンに寄せるロブショットは天下一品。「ロブショットはピッチエンドランよりも手首を使うため難易度が高く、実際に試合でやるのはとても勇気がいるもの。それをあっさりと決めてしまうのがアン・ソンジュさんと申ジエさんです」。では、そんな匠の技を解説してもらおう。
「ロブショットは“いかに手元を使わずに手首を使えるか”が大事です。コックを使ってクラブでVを描くことで“ふわり”と浮いたアプローチをすることができます」
今回は30ヤードのロブショットを見てみよう。注意点としては、アドレス時から手首を柔らかく使えるようにしておくことが重要である。「腰を落とす、手元を落とす。この立ち方がロブショットの秘訣です。手元が高いと手首が固まってうまく使うことができません。また手元を落とすことでフェースを開きやすくなります。アンさんはフェースが空に向くくらい開いています」。
また、体重配分も重要なポイント。「“ボールを上げよう”と聞くと右足体重にしてフェースを開き、しゃくり上げようと構えてしまいがち。ですが、アンさんのアドレスを見てください。左足と右足の体重の割合は6対4くらいで、左足の方が多めに乗っています。それでいてしっかりとフェースが開けている。このアドレスを作ることがロブショットを打つために不可欠です」。
テークバックから“柔らかく”使えるようにした手首の出番。「クラブを上げるときに手元はほとんど使わず、手首のコックを使ってクラブを上げていきます。感覚的には腕が1の動きに対して、手首が9の割合くらいの感覚です。手は低いまま、ヘッドは高めに」。トップで、シャフトが背骨と並行くらいに立って、フェース面が自分の顔のほうに向いていたら合格です。
ここまでできれば、あとはヘッドの重さを使ってクラブを下ろしてくるだけ。「高い位置から腕を使わずに下ろしてきます。インパクトを迎えたら、またトップと正対照になるように手首を使ってクラブを立てます。ヘッドの重さと手首を使って、クラブをVで動かしているような感じです。最初から最後まで、手元はほとんど動かないイメージを持つといいでしょう。大事なのは手打ちとリストを使って打つのは全くの別物だと言うこと。遊びの中で“自分の感覚”を身につけてください!」。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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