<スタンレーレディス 最終日◇13日◇東名カントリークラブ(静岡県)◇6572ヤード・パー72>
台風19号の影響により短縮競技となった「スタンレーレディス」はトータル8アンダーまで伸ばした黄アルム(韓国)が今季最初のカップを手にした。自身の喜びの声の前に、「このたび被害に遭われた皆様に謹んでお見舞い申し上げます」と表彰式のスピーチで話すなど、思いやりのあるアルムらしい勝利となった。
白にブルー さわやかな渋野さん【大会写真】
27ホールの短縮競技、無観客試合…。いつもと違う試合はやりやすさとやりにくさが同居していた。「朝から体がかたかったですね。9ホールのほうが1つのミスが命取りですから」と緊張感のなかでのプレー。さらにギャラリーが入っていないため、「声援がないから、ボールがどこに行ったかも分からない難しさもありました」。改めてギャラリーのありがたさを感じるとともに難しい状況下での優勝争いとなった。
一方で、安全を考慮し撤去されていたギャラリー向けのリーダーボードがなかったのはありがたかった。「2位に2打差つけてのスタートだったので、自分がミスしなければ勝てると思ったから、17番までスコアを知りたくなかった。ちょうど、そこまでスコアが分からなかったのはすごく良かったですね」。リーダーボードがないため、ひたすらに自分のプレーに集中できたことが勝利へとつながった。
それでも、「まさかここで勝てるとは思っていなかった」。調子は上がってきていたが、まだ自信は取り戻せていなかったなかでの勝利に驚きを禁じ得ない。そしてもう1つ。若手の勢いが「勝つのは難しい」という思いにさせているという。
「最近の子たちはみんなうまい。シブコとか本当にうまいから、勝ったけどあまり大きいことは言えない(笑)」
どこがうまいのだろうか。「若い子でもショートゲームがうまいですね。また、特に黄金世代の子たちは遅くまで練習を頑張っています。飛ぶし、スイングもいい…」といいところを挙げればキリがない。とはいえ、アルムいわく「これまでもそうですし、毎年新人の子たちはいいんですよ」とここまでは一緒。黄金世代には、もう一つの理由があるという。
「マスコミの皆さんが“黄金世代、黄金世代”と持ち上げてくれる。だから気持ちよくプレーできているところがあると思います。みなさんの力が大きいと思いますよ」。体型や技術などの能力以上にメディアの力が大きいと感じている。そこに「油断できないくらいうまいですよ」という能力が加われば、それは強いといったところだろう。
それだけに、今後の目標も控えめだ。「勝てたので残りは何でもいいです(笑)。来週、私の誕生日で父が日本に見に来るので、そこでいいプレーができたらいいですね」。日本ツアーに参戦して13年目。初めてレギュラーツアーに出場した思い出の大会で優勝しても、最後まで31歳は謙虚さを失わなかった。(文・秋田義和)
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