<ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日◇6日◇東京よみうりカントリークラブ(東京都)◇7023ヤード・パー70>
昨年の「日本オープン」以来となる日本ツアー5勝目を二つ目の日本タイトルで飾ったチャン・キム(米国)。先にホールアウトし、同スコアで最終組を回っていた岩田寛と谷原秀人を待ったが、二人がともに最終ホールでボギーを喫し、優勝が転がり込んできた。
誇らしげにトロフィーを掲げるチャン・キム【大会フォト】
欲しいタイトルだった。「日本版のツアー選手権。30人しか出られない舞台になんとか戻ってこられた」と、日本ツアー2試合で出場権利を獲得し、今年最後の舞台への切符を手にした。「優勝したいと思っていた。これでメジャー2勝目。とても名誉なことでうれしい」と、今季日本3試合目で勝ち取った最高の栄誉に笑みを見せた。
日本に参戦するようになり、日本が大好きになった。食事の面でも不自由はなし。「(コンビニの)ローソンが好き。サンドイッチも弁当もなんでも(笑)」と、入国してからの隔離期間中も食事の面では苦労はなかった。「部屋が狭くて、素振りもできなかったけど」と、ゴルフに関しては心配もあったが、日本初戦となった「三井住友VISA太平洋マスターズ」で4位、「ダンロップフェニックス」で5位タイと奮闘した。
「日本に戻ってプレーする機会をもらえたので、戻るのは当たり前。入国できるように政府に働きかけてくれたJGTOや皆さんに感謝したい」。入国後2週間の隔離期間があっても、戻らない手はなかった。そして、感謝の気持ちを結果で表した。
コロナ禍のなかでは、拠点のアリゾナ州で練習を繰り返すしかなかった。なかなかかなわない日本入国を待ちわびながら、世界ランキングの資格で8月には「全米プロゴルフ選手権」、9月には「全米オープン」にも参戦した。その世界ランキングも、「試合がなかったからどんどん落ちていった」と、昨年末には61位だった同ランキングが、いまでは103位まで落ちている。
「来年も日本ツアーで結果を出して、もっと世界ランキングを上げて、また海外メジャーやWGC(世界ゴルフ選手権)に出場したい。そして、PGAツアーにも出たい」と夢を語る。しばらく日本ツアーの試合はないが、今回の優勝が、世界最高峰の舞台に進むための新たな一歩になったのは間違いない。
大きな混乱を招いたコロナにめげずに、最高の形で締めくくった2020年。10月には米国カリフォルニア州で開催された「ZOZOチャンピオンシップ」で子どもの頃から憧れの存在だったタイガー・ウッズ(米国)とも同組でラウンドした。そして、「何よりも勝てたことが一番うれしい」と気持ちよく親族が住む韓国にあす飛んで、新年を迎えるという。
圧倒的な飛距離でツアーを席巻した17年、腰のケガでツアー出場を見合わせた18年。日本のナショナルオープンを獲った19年。そして日本シリーズを制した20年。21年はどんなチャン・キムを見せてくれるのか。一見、強面(こわもて)だが、最高に陽気なナイスガイのさらなる飛躍が楽しみだ。
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