2020年もまもなく終わり。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内男子6試合、国内女子14試合となってしまった。21年まで続く異例のシーズン。短い時間ではあったが、今年も多くの名場面が生まれた。そこで印象に残ったシーンをALBA.Netの記者が勝手に選定。今回は渋野日向子が国内復帰戦で見せた“悔しさ”について。
国内開幕戦となった6月の「アース・モンダミンカップ」で予選落ち。“連覇”が期待された全英を含むスコットランド2戦でも決勝ラウンドに進めずに日英3連戦がまさかの予選敗退という結果。夏場は、落胆の表情を浮かべる渋野日向子の姿が目立った。
海外の大会においては、リモート会見やオンラインインタビューという形で渋野の声をパソコン上で見る機会は増えたが、プレーを生で見ることもできず、微妙な表情の移り変わりや言葉の微妙なニュアンスも読み取れない。その渋野の“生声”をようやく聞くことができたのが10月の終わり、実に9カ月ぶりだった。
大きな期待を背負い戦った海外遠征2カ月。結果は周囲の“勝手”な期待とは“乖離”していた。遠征最終戦となった「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」後には、「メジャー覇者の肩書きを捨ててもいい」と、過去との決別まで表明した。そして迎えた「樋口久子 三菱電機レディス」。久しぶりに見た“生”渋野は、まだ迷っているように見えた。
初日こそホールインワンを達成するなど華々しい国内復帰に見えたが、どうにも調子が上がらない。グリーン周りのアプローチで苦戦し、短いパットも決まらない。初日のエースで稼いだ2アンダーは2日間もたずにトータル5オーバー・65位タイという結果で予選落ちだった。
この2日目のあとに渋野が語った言葉に、胸をえぐられるような気持ちになったのを覚えている。「何回悔しい思いを経験したらいいんだろう。でもこれが実力ですよね。去年がうまくいきすぎていました。比べたら前に進めないけど、比べてしまう自分がいるのが本当に情けないです」。こちらも同じように勝手に期待していたからこそ、この発言に心を痛めた。そこまで苦しんでいたのかと驚いた。それほど、このときのことを鮮明に覚えている。
ただ、ここで後ろ向きの自分と決別できたのだろう。この予選落ち後、尻上がりに調子を上げると、国内最終2戦を連続トップ5で締めくくり、「全米女子オープン」での優勝争いにつなげた。結果は悔しい4位。そこにあった悔しさは、過去にとらわれる悔しさではなかった。惜敗でにじませた悔しさは、次のステージに早く向かいたいという強い思いがあっての悔しさだった。
今年は女子ツアー取材がこの1試合に終わってしまったため、三菱電機レディス以降、渋野と対面し直接声を聞くことはできていない。この先、どこで再び渋野と直接話ができるか分からないが、そのとき渋野はどんな口調でどんな話をしてくれるのだろう。笑顔もいいが、前に進むための悔しさで怒りがこみ上げているような表情の渋野を、もっともっと見たいと思う。(文・高桑均)
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