<アース・モンダミンカップ 最終日◇27日◇カメリアヒルズCC(千葉県)◇6639ヤード・パー72>
菊地絵理香にとって、覚悟を決め、腹をくくり続けた4日間が終わった。2015年の「KKT杯バンテリンレディス」で初優勝を挙げてから、16年「スタジオアリス女子オープン」、17年「Tポイントレディス」と3年連続で勝利を挙げた。しかし、そこからは勝てない日々が続いた。ようやく手にした4年ぶりのトロフィー。久しぶりの勝利ということもあるが、なによりも「一皮むけられた」ことがうれしかった。
2位に4打差をつけるトータル16アンダー・単独首位で、最終日が始まった。逃げ切りを図るなか、スタートの1番で「得意」と話す下りのバーディパットを「イメージ通りのジャストタッチ」で決め、気分よくコースに出る。ここで同組で2位につける西郷真央に5打差をつけたが、その西郷は4番から4連続バーディを奪って猛追。「パッティングをしっかりヒットしてくる選手。チャンスについてなくても長いのを決めそうで、気が抜けなかった」。13学年下の後輩のプレーが、いい刺激になっていた。
9番パー3のティショットでは、西郷が池に落とした場面を見守った。ここは3日目まで難易度1位を誇ったキーホールだ。「流れを悪くしたくない。西郷さんが打って風も分かったし、ギリギリの番手で気合を入れて打ちました」。これがしっかりグリーンをヒットし、パーでしのいだ。終盤16番でも1.5メートルのパーパットを決めた時の心境を、「気持ちで入れた」と話す。この“気合”、“気持ち”という部分こそ、菊地の変化があらわれた部分だった。
「私は気は強いけど、心はすぐにポキポキ折れて弱い。これまでも大事なところで弱い自分が出てしまっていた。それが周りに伝わって、崩れそうなイメージを与えていたと思う。“うまい”と言われるよりも“強い”と思われたい。ここで変わらないと何も変わらないと思った」
パーセーブ率7位という数字を見ても分かるように、アプローチや小技の技術はツアー屈指と言われる。バランスの取れた、うまい選手であることに異論はないだろう。しかし、なかなか勝つことはできなかった。この日の会見では何度も「強い選手に憧れる」、「強くなりたい」と“強さ”という言葉を口にしたが、それこそが求めるものだった。
2日目を終えた後には、選択をしながら「失敗することを恐れ」優勝を逃してきた、これまでに思いをはせた。「打つ前から逃げていたら何も変わらない。この4日間は腹をくくっていきました」。期間中、気持ちのこもったガッツポーズが繰り出されるシーンを何度も見たが、その行動の裏にはこんな気持ちが隠されていた。
優勝後のインタビューでは「まだまだ下手くそ」と自分について言い放った。会見でも「私もまだ若い子には負けてないわ、とかは思えない」と言う。そして「ちょっと自信が出てきた」と笑みをうかべた。長年ツアーの第一線で戦い続けてきた32歳のベテランの言葉とは思えないが、それが偽らざる本音なのだ。
「ずっと勝ちたかった」という4日間大会で、トータル20アンダーを叩きだして快勝。優勝賞金5400万円を手にした。「自分には無縁と思っていたビッグトーナメントでの優勝はビックリ。でもすごくうれしいですね」。4日間とも60台で回りきり、単独首位を守り続けての完全優勝。文句なしの“強い”ゴルフで4年ぶりの優勝を手繰り寄せた。
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