<フジサンケイレディスクラシック 最終日◇24日◇川奈ホテルゴルフコース 富士コース(静岡県)◇6447ヤード・パー71>
「やっと勝てました」。初めての勝利は完全優勝だった。プロになって5年目、最終日最終組を9度経験してきた高橋彩華は、“10度目”の正直でついに栄冠に輝いた。
「アマチュア時代のピークだった」と、2016年の「日本アマチュア選手権」で勝利して一気に注目を集めたが、翌年にパター、さらに翌年にはドライバーショットに悩み、低迷する。それでも2度目の受験となった18年のプロテストに合格。「お先真っ暗」の状態でプロの世界に足を踏み入れた。
それでも日々試行錯誤を重ねて、19年6月の「ニチレイレディス」の2日目に単独首位に立ち、自身初となる最終日最終組を迎えることになった。だが、鈴木愛にプレーオフで敗れて、結果は2位。大粒の涙を流した。
そのあともチャンスは何度も訪れるが、そのたびに苦汁をなめてきた。同年10月の「富士通レディース」では古江彩佳の巻き返しを前に敗れ、21年4月「ヤマハレディースオープン葛城」では稲見萌寧に勝利を渡すことになった。気が付けば、無冠のまま“最終日最終組”を「9」度も経験していた。
そして、今大会で“大台”の「10」回目となった。1番、2番ホールともにアプローチを寄せきれず連続ボギー発進。「また勝てないのかな」と苦しいスタートとなった。「見えないお化け」と表現するプレッシャーも感じていたが、きょうの高橋はいままでとは違う。
続く3番パー4、残り150ヤードからの2打目。「(プレッシャーから)逃げんじゃねえ」と自身に言い聞かせながら、左から6ヤードに切られたピンを果敢に狙い、1メートルにつけてバウンスバック。続く4番パー5では90ヤードから50センチにつけて、すぐさま獲り返した。
首位にいるプレッシャーはとてつもないものだったが、オフからの取り組みが高橋を支えた。緊張すると手で上げるクセがあるからと、「背中で上げるイメージ」で体を使ってテークバックできるように練習を重ねていた。さらに「勝てていなくても上位にいることはメンタル強いじゃん」とタレントの武井壮氏に声をかけてもらい、優勝争いに対する視点が変わった。
5番でスコアを落として一時は首位を明け渡したが、後半に入って3つスコアを伸ばす。混戦から頭ひとつ抜け出すと、2位に2打差をつけてホールアウト。初日からトップの座を譲らず、完全Vで初めての優勝カップを掲げた。
「ここを乗り越えないと勝てないと思っていた」。過去に9度跳ね返された“最終日最終組”の壁。お化けを完全に封じ込め、「初優勝の呪縛」から解き放たれた。再来週には、昨年に最終日最終組でプレーした試合で「一番悔しかった」と振り返るメジャー大会「ワールドレディスサロンパスカップ」も控える。「これからの自分自身がすごい楽しみです」。大粒の雨とともに、23歳のうれし涙がほほをつたった。(文・笠井あかり)
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