<AIG女子オープン 事前情報◇1日◇ミュアフィールド(スコットランド)◇6680ヤード・パー72>
2週前の海外メジャー「アムンディ エビアン・チャンピオンシップ」で西郷真央が3位に入り、先週の「トラストゴルフ・スコティッシュ女子オープン」では古江彩佳が米ツアー初優勝。海外での日本勢の活躍が目覚ましい。
今週は今季メジャー最終戦の「AIG女子オープン」(全英)が行われる。元気な日本勢の中で気になるのは、その2戦で予選落ちに終わっている19年大会覇者の渋野日向子。結果の出ない原因はどこにあるのか。米女子ツアーを中継するWOWOWの解説でお馴染みのプロゴルファー、田中泰二郎に聞いた。
■取り組むスイングがコース形状を選ぶ
今季最初のメジャー「シェブロン選手権」では4位タイ、「ロッテ選手権」で2位と4月は上位フィニッシュの試合が続いた渋野。6月の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」では、予選は通過したものの3日目のスタート前に体調不良で棄権。それ以来の出場となった「アムンディ エビアン・チャンピオンシップ」から2戦連続で予選落ち。
エビアンの解説を務めた田中は、「テレビで見ている人は調子が悪いの?って思うかもしれません。ですが、調子はあんまり関係なくて、今やっているスイングの形がコースによって対応できる、できないがあるのだと思います」と昨年から取り組む新スイングが影響していると話す。
「スイングをコンパクトにしたことで(19年の)全英に勝ったときのようなぶっ飛ぶ渋野さんではなくなりましたが、最近は飛距離も戻ってきています。スイング自体、だいぶ形は出来上がってきていて、うまくいく1週間とうまくいかない1週間が共存する中で戦っている」とし、ここ数試合に関してはコースとマッチしておらず、“うまくいかない1週間”が続いているという。
具体的にはスイングの特長が影響している。「渋野さんは肩周りの関節が想像できないぐらい柔らかい。そのためスイング中に“余り”が多くなるので緩みやすくなると思います。ですから両ヒジを絞ってトップスイングを小さくして緩みを作らないように、今の形になったと思います」。緩みを生まないようにしたことで、極端にインサイドからクラブを入れる形になっている。
「平らなライで問題ない」とするが、今の渋野のスイングは傾斜地に苦労すると田中は指摘。「左足下がりとツマ先下がりの傾斜から、ショットがうまくいっていません。極端にインサイドからクラブが入るため、いわゆるクラブが下から入るスイング。バンカーショットをイメージすると分かりやすいと思います。特に長いクラブになると難しい」。
左足下がりとツマ先下がりのライでは、ボールの手前の地面の方が高いため、インサイドからクラブが入ると、ボールの手前をダフってしまう。だからうまくボールにコンタクトできない。ツアーで戦うプロゴルファーは少なからず入射角をコントロールするものと付け加えた。
アップダウンのきついコースで行われたエビアンでは、それが顕著に表れ、126位タイと下位で予選落ちに終わった。「今は形づくりで、頑なに自分のスタイルを貫いている印象です。状況に応じて少しクラブを立てて入れるなど、もう1パターンスイングがあるといい。当然、本人もそれは分かっているとは思いますが」。意図的にスイングを1パターンで臨んでいるからこそ、コースによってうまくいく1週間とうまくいかない1週間が出やすいという。
■リンクスでは攻め方に不安、一方で期待もある
今週の舞台は全英オープンでもおなじみのミュアフィールド。スコットランドを代表するリンクスコースの一つだ。エビアンに比べればコースはフラットだが、フェアウェイには大小のコブがあることでも有名。傾斜地からの対応に加えて、攻め方も気になるところ。
「リンクスコースは地面が硬くて風が強い。低い球、転がして攻めるのが常套手段ですが、渋野さんはアッパーぎみのスイングで高いドローボールが持ち球。心配と同時にどう攻めるかの期待があります。リンクスのディボット跡や芝の悪いところから打っていると、必然的にスイングはよくなりそう。逆にどうしてくれるのか楽しみな部分ですね」
リンクスならではの“悪いライ”からボールを打つことでスイングがよくなりそうと、逆にコースを利用して好転もありえるという。
「ゴルフって1年間うまくいかなくてもいいんです。渋野さんははまる1週間を作れるタイプ。(全英は)そこに期待ですね。本来は『どこでも戦えるスイング』を目指していると思いますが、いま結果を残すには状況に合わせた打ち方がカギになるでしょう」
2019年は初出場でメジャー制覇。何をするか分からないのが渋野でもある。自分のスタイルを貫くかどうかが結果が左右しそうだが、今週は「うまくいく」、「うまくいかない」のどっちの1週間になるのだろうか。
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