2020年はSIMが話題を集めました。僕の2020年のエースドライバーはSIM MAX-Dだったので、SIM2がどのように進化したのか非常に楽しみです!少し小ぶりなヘッドのSIM2、大きめのSIM2 MAX、僕が一番気になっているSIM2 MAX-D!テーラーメイドは売れていてもモデルチェンジに気合を入れていますね。まず目を引くのが、このカラーリング、今回のSIM2のエメラルドブルーはとてもキャッチーな色ですね。ドライバーのテクノロジーの進化とは、パーシモンからメタル、メタルからチタンというように材料革命です。テーラーメイド、材料革命をやってくれました。ソールのカーボン面積をより増やすのは想定内ですが、想定外だったのが、このエメラルドブルーの部分。触った瞬間に驚きました。カーボンでもないしチタンでもない、なおかつ鉄でもない。となると、アルミです!はるか昔にアルミのドライバーがあったような記憶がありますが、40~50年前の話です。いまどきのクラブでアルミの材料。今までどおり、ツイストフェースはチタンで鍛造ですが、なんとアルミ部分も鍛造です。
私がよくチェックしているサイトMY GOLF SPYで画像だけ早く公開されていたので見ていたところ、ネジの周りに文字が小さく入っています。SIM2にはHIGH MOI(MOI=慣性モーメント)、LOW SPINと書いてあります。ヘッドが大きいSIM2 MAXにはHIGH MOIのみです。SIM2 MAXは慣性モーメントが大きい、ということですね。SIM2 MAX-D にはHIGH MOI、DRAWと書かれています。Dというのは球がつかまる、ドロー(DRAW)のDです。 このネジは回るのかなと思いましたが、回りません。
SIM2シリーズの3本ではネジの位置が微妙に違います。SIM2 MAX -Dのほうがよりシャフト寄り、SIM2 MAXのほうがシャフトから離れています。シャフトに寄せることで重心距離が短くなり球がつかまります。SIM2はセンターに近いところにネジを持ってきて、重心を浅くしていますね。 もうひとつ、バックフェースに可動ではありませんがウェイトが付いています。SIM2はウェイトが少なくて16g、SIM2 MAXは24gと重さが違います。ヘッドの総重量はそんなに違いませんから、ウェイトの重さが違うということは、SIM2はより前に重心があることがわかります。SIM2 MAXは24g、SIM2 MAX-Dは22gなので重心が深くなります。 シャフトは前作とコスメが変わっていますが、SIM2にもSIM2 MAXにも2種類あります。TENSEI SILVERとTENSEI BLUEです。
前置きが長くなりましたが、打ってみたいと思います!アドレスした時の顔の感じはあまり変わらないですね。見た目に違和感はありません。アルミというだけで軽いイメージがあります。SIM2はシャフトが非常にしっかりしていてアスリート向きのクラブです。 少し軽めに振ってみます。うん、シャフトがしっかりしている!少しずつヘッドスピードを上げてみます。低スピンでいい感じですね。HS 42.6m/sで振ると、ボール初速62.4m/s、 254.4Yが出ました。スピン量は2020と低スピンですね。数値の厳しいトラックマンでスピン量が2020というのは、一番飛ぶ弾道と言えます。3.7Rでほぼストレート。ストレートに近い弾道で左のミスが出づらいクラブです。シャフトとの相性が非常によくて「叩けば叩くほど強い球が出るクラブ」という印象です。飛距離には関係ありませんが、アルミ気に入りました!アルミに新しさを感じますね。
SIM2 MAXは後ろのウェイトが24gと重いので、ワッグルした時に後ろの重さが効いてきますね。SIM2よりやっぱり大きいですね。打ってみます。いい感じ!ほぼストレート。250.9ヤードで距離は同じくらいですが、明らかに球が高い!キャリーが出ています。重心の深さで球を上げる、クラブが意図するとおりの球が一発目から出ました。リアルロフトは多くないし、見た目では球が上がるクラブに見えませんが、重心の深さ、慣性モーメントの大きさで球が上がります。ツイストフェースのおかげか、ヒールに当たっても飛距離がほとんど落ちません。慣性モーメントの大きさを感じますね。完全にきれいに棲み分けができています。中弾道で強い球を打ちたいならSIM2、キャリーを出したいならSIM2 MAXです。
ヘッドを大きくして慣性モーメントを大きくすると、球がつかまりにくいという特徴がありますよね。そこで、つかまりに特化しているのがSIM2 MAX-Dです。「D(=DRAW)」というだけに、SIM2 MAX-Dがどのくらいつかまるのか楽しみです。シャフトはSRなのでさっきのSIM2 MAXのSより少しやわらかいです。シャフトがやわらかいのでさらにボールが上がるはずです。これはヘッドもシャフトもハイドローを打たせようというクラブですね。打ってみます。おー!いい弾道!HS 42.5m/sで振ると、ボール初速62.1m/s、 251.6Yが出ました。つかまえにいくと球をガッツリつかまえてくれます!大型ヘッドで慣性モーメントが大きいと球がつかまりにくいという特徴がありますが、SIM2 MAX-Dはヘッドが返る動きが手に伝わります。
今回試打したSIM2 、SIM2 MAX、SIM2 MAX-Dはきれいにキャラクターが違います。3つのモデルは特徴がまったく異なり、棲み分けがはっきりしているので、この3本はどれにしようか迷うということはないでしょう。打ち比べるのは楽しいですが、打ち比べる必要がないくらい、きれいにキャラクターが分かれています。低スピンで低めの弾道で強い球を打つならSIM2、左のミスもありません。直進性の高い球を打つならSIM2 MAX。球のつかまりが欲しいならSIM2 MAX-D。
2020年注目を浴びた、完成度の高いSIM。旧作のSIMシリーズを打ち比べたいと思います。まずはSIMから行きます。構えてみてもSIM2とそんなに違いはありません。打ってみます。ちょっと音が硬いな。HS 42.4m/sで振ると、ボール初速60.3m/s、249.2Yが出ました。SIMは完成度が高いです。
決定的な違いは、重心距離を調整して弾道をコントロールするというMシリーズからの名残の機能がSIMにはあります。SIM2には調整機能はなくなりました。調整機能がほしい方にはSIMにアドバンテージがあると思います。SIM2はアルミが入ったことで最新のテクノロジーでより設計の自由度が高いです。より強い球を打ちたいならSIM2ですね。プロゴルファーでも、強い球が打ちたいプロはかなりSIM2に移行するのではないかと思います。
続いて、大きいほうのSIM MAX。けっこう人気がありました。SIM MAXは調整機能が付いていません。打ってみます。やっぱり球が高いですね。HS 43.1m/sで振ると、ボール初速60.6m/s、249.5Yが出ました。
何を打っても同じじゃないか、とは言わないでくださいね。撮影中に今のナシね、というのはやらずにぶっつけ本番でやっています。SIM MAXは完成度が高いので、SIM MAXとSIM2 MAXどっちがいいですか、と聞かれたら悩みます。明らかな違いは、バックフェースのウェイトです。ワッグルした時にはっきり違いが分かりました。SIM2 MAX の24gはけっこう大きいですね。SIM MAXにもウェイトは付いていますが、20gまではないです。重心を深くするとスイートエリアは広がりますが、当たり前ですがスピンが増えます。SIM2 MAXは重心を深くしているのに初代SIM MAXとスピン量が変わらないのがいいですね。よりミスに対する寛容性があります。慣性モーメントの数値が同じでも、性能が同じとは限りません。重心深度が深い方が打ち出し角が高くなります。SIM2 MAXは旧モデルSIM MAXに比べてよりキャリーが出てスピンが増えない、いいとこどりな作りをしています。飛距離どうこうもありますが、より今のテクノロジーを生かしたクラブを使いたいなら迷わずSIM2 MAX。そこまで重心が深くなくてもスイートエリアの広さで、やさしさで打っていきたいならSIM MAXがいいでしょう。
次に打つのは、僕が使っているクラブ、2020年お世話になったSIM MAX-Dです。このクラブには本当にいろいろ助けられました。打ってみます。落ち着いた球!うん、いい球!慣れていますからね。HS 42.3m/sで振ると、ボール初速61.6m/s、252.4Yが出ました。
正直に言うと、SIM MAX-Dを超えるクラブを1年で作れるのかな?という疑問がありました。それを作ってきたというのがSIM2 MAX-D。ちょっと大胆なことをしてみます。僕のエースシャフトTOUR AD HD-5 (S)でヘッドをSIM2 MAX-Dに変えて打ってみます。シャフトを揃えて打ち比べたいですからね。
打ってみます。ちょっと足滑ったのに、データがいいな~!安定してキャリーがちゃんと出ますね。ヤバいな、また買い換えなきゃいけない。う~ん、気持ちいい!HS 43.2m/sで振ると、ボール初速63.0m/s、263.3Yが出ました!
やめてくれ、俺の財布が軽くなる!笑うしかないよね。テーラーメイドさん、先に出してよコレ(笑)。毎年買えってことですか?SIM2 MAX-Dいいですね。モデルを変えても10ヤード伸びるということは、ほぼあり得ません。63歳でトラックマンで263.3ヤード。テーラーメイドさん、恐れ入りました。旧作のSIM MAX-Dはいいクラブなので、買い換えなくていいかなと、実は試打する前には思っていました。でも10ヤードの差を突き付けられたらね。「飛距離1ヤード1万円」と言う人もいますが、SIM2 MAX-D は10万円はしませんからね。びっくりしました。 SIM2 MAX-Dもクラブの特性がはっきりしています。球をつかまえたい、というのはドローを打ちたいというのとは違うので勘違いしてほしくないのですが、SIM2シリーズの3モデルの中で球のつかまりを求める人には、迷わずSIM2 MAX-Dをお勧めします。マーク金井が飛んだからといって皆さんが飛ぶとは言いませんが、1ヤードでも飛ばしたいなら新モデルを買ってください。1ヤードでスコアが変わるわけではないので、SIMの良さを味わいたくてコストパフォーマンス重視なら旧モデルのSIM MAX-Dをお勧めします。新モデルが出れば旧モデルの価格はこなれてくるはずですから。
SIM MAX-Dを使っている僕ですが、わずか1年でここまで進化するとは思ってもみませんでした。「ショック」と言っても過言ではありません。ここまでショッキングにクラブを変えられるというのは、テーラーメイドの技術力の高さを感じました。3つのモデルは特徴がまったく異なり、棲み分けがはっきりしているので、どれにしようか迷うということはないでしょう。とはいえクラブは打ってみなければわからないので、ぜひお店で試打してみてください!
マーク金井 (プロフィール )
1958年9月16日生まれ身長183センチ、 大阪府出身、血液型A型。ゴルフ雑誌編集者を経てフリーに転身。これまで試打したクラブは1,000本を越える。豊富な知識とシングルの腕前でクラブの試打&レポートをゴルフ雑誌やネットで展開。