2014年に登場する「NEW NEXGEN」は、歴代シリーズでは味わえなかったスピード感と球の強さを持つモデルに仕上がった。史上最高の飛距離性能を持つクラブはいかにして作られたのか。開発の裏側、エピソードを開発者の櫻木博公が語る。
「601」から「001」までのドライバーを開発する際、私がコンセプトにしていたのは「平均飛距離を伸ばすものが飛ぶクラブ」ということでした。例えば、シャフトが長く、しなるシャフト、ヘッドが重いクラブ。クラブ自体の飛距離性能は高いのですが、それを使いこなすにはプレーヤーの技術や体の柔軟性などが必要になります。多くのプレーヤーはシャフトがしなり戻る間やタメを作ることができず、クラブの性能を引き出すことができないのです。つまり、クラブの性能から見た「飛ぶ」クラブというのは一部の人しか使いこなせないもの。だからこそ、平均飛距離が伸びるクラブ、曲がらないクラブが「飛ぶクラブ」だと考えていました。
この考えが変化してきたのが前作「201」を開発した時です。ヘッドを効かせることでボールを飛ばす「ハンマーバランス理論」を取り入れてクラブ作りを始めました。昔からある理論ではありますが、この方法にはデメリットがあり、これまではなかなか完成度の高いドライバーが生まれこなかった経緯があります。
ハンマーバランスとは、ヘッドの重さを利用してボールを飛ばす理論。ですから、多くのメーカーはヘッド重量を重くして開発してきましたが、この方法では同時に振りやすさが損なわれてしまう欠点があります。そこで「201」では、逆転の発想を取り入れました。ヘッド重量を変えずにその他のパーツを軽くすることで相対的にヘッドを重くしたのです。グリップ重量を45gから25gへ変更。そしてこのバランスにマッチするシャフト開発も必要になりました。
具体的には、バランスの重いクラブを安定させるシャフト中間部の硬さが不可欠ですし、同時に振りやすさを確保するために手元部の柔らかさも必要になるということです。これだけ硬度差のあるシャフトを作ることは非常に難しく、150本以上の試作を重ねてようやく「201」が完成しました。これまで、私の考えではクラブ作りにおいてヘッドとシャフトの重要度は8:2。ヘッドの重要性の方が高かったのですが、「201」のクラブ作りでその割は5:5に変わりました。「201」はドライバー開発に対する考え方が大きく変わるきっかけになったモデルでした。