2014年に登場する「NEW NEXGEN」は、歴代シリーズでは味わえなかったスピード感と球の強さを持つモデルに仕上がった。史上最高の飛距離性能を持つクラブはいかにして作られたのか。開発の裏側、エピソードを開発者の櫻木博公が語る。
ヘッドの重さを変えずにヘッドバランスを重くするという「201」ドライバーで取り入れた「ハンマーバランス理論」を実現するには、手元部と中間部の剛性差の激しいシャフトが必要不可欠でした。さまざまな苦労の末、完成したシャフトですが、実はハンマーバランスのクラブを振りやすいモノにする以外に別の特徴があることが開発段階でわかりました。この独特な剛性分布のシャフトには、ヘッドを走らせる性能があるということです。 ヘッドを走らせる性能を有効活用することができれば、「201」の飛距離性能をさらに伸ばすことができる――。今回のニューモデル開発では、このシャフト特性を生かすことがキーポイントになりました。
一方、そんな時に新たな出会いがあったのです。2013年のゴルフクラブの話題の中心になった前重心ヘッドです。「プロが300ヤード飛ばすと話題のフェアウェイウッドがあるからテストしてもらいたい」と言われ、このクラブを試打する機会がありました。
しかし、私のようなシニアゴルファーにはうまく使いこなすことができず、わずか2球打っただけでテストを中止しました。前重心ヘッドがこれほど注目されたのは、ボール初速を上げて強い球にする性能があるから。急降下するジェットコースターを想像してみてください。後方に重さがあるよりも、先頭に重さがある方がジェットコースターは加速し、勢いよくレールを降りていきますよね。前重心のヘッドにもこのような効果があるわけです。
しかしその反面、デメリットもあります。球がつかまりづらく、ボールが上がりづらいという点です。これまでのクラブ開発では「平均飛距離を伸ばすこと」「振りやすいクラブ」が飛ぶクラブの条件と考えてきましたが、実現するために重心を後ろに設定し、球を上がりやすくしてきました。前重心ヘッドは今までとは真逆の発想のヘッドですから「やさしい」と感じるわけがありませんよね。「プロが300ヤード飛ばす」といわれるヘッドは、ある程度以上のヘッドスピードで適正なスピン量が確保できなければポテンシャルを引き出すことができないのです。